1/7446が過ぎて、また日は巡る

いつもの金曜日よりも、少し忙しかっただけ。ただそれだけで、特別な一日は、単に“10月29日”でしかなかった。真っ暗になった農道、すれ違うヘッドライトの列、目線を横切る一閃の光・・・雨が降っていないだけで、昨日と同じ光景は、きっと明日も明後日も繰り返されるはず・・・そんな渇いた思いを抱きながら、Bongoのハンドルを小刻みに動かし続ける。

何の変哲もない夕餉がテーブルに並べられ、テレビでは芸人たちが気持ち良さそうにカラオケを唄っている。「MX408コース情報」が最新のコース状況を伝え、ガレージではRMとKXが走り出すのを待っている・・・どこもかしこも、普段の金曜の夜だ。過ぎ去った日々を思い出すには、時間が短過ぎるんだろう。“思い出”なんて時間の産物、結局そんなものだ。

ここで立ち止まっては、未来の自分に何と言えばいいのか・・・そう心に決めて飛びだしただけ。恐怖心を煽る連続ジャンプだって、いつまでも“ナメ”ていたら・・・跳ぶことなんて叶わない。たとえショートしても、次の周回で補正すればいい。開け切って、跳び切る・・・少しだけ右手を捻る勇気があれば、“新世界”は見えてくる。これまでの“人生”も、そんなものだったし、これからもそれは変わらない。

歴代5位の“20年と4カ月”、約7446日もあと1時間足らずで終わる。何事もなく、無事チェッカーを受けて・・・明日からは、新しい1/xが始まる。そして、その明日には、見知らぬ誰かの1/xが終着となるのかもしれない。止まることなく、過ぎ去っていく“時”は、いつものように朝を連れてきてくれるはずだ。それは、何も特別な朝ではなくて、普通に一日の始まりを告げる朝。ただ、明日ばかりは、嵐の前触れのような雨で目覚めることになりそうだけど・・・。