目をとじて・・・小旅行

何とか雨が上がっただけで、台風一過とはほど遠い、さえない灰色が日曜の朝を覆っている。走りを休んで、整備も休んで、仕事場から持ち帰った“過ぎ去りし日々”を手に取ってみる。デジタルカメラのおかげで、すっかり目にしなくなった“写真”・・・その一枚一枚に、かけがえのない時間が閉じ込められていた。職場の仲間も、テントの前でバーベキューをつつきながら屈託なく笑っている。そこには、まだ仲間と言えていた頃の大切な記憶が写っていた。

時を遡って泳ぐ・・・ふと耳に中森明菜の声が聞こえてきた。“過ぎ去りし夢の間に あなただけが消える・・・”アルバム収録曲で、お気に入りの一曲、「目をとじて小旅行(イクスカーション)」だ。哀しい女性の恋心を、切なく歌い上げる明菜ちゃん・・・そんな曲が似合う一日、思いがけず色褪せない過去を旅できて、たまにはバイクを休むのも悪くないね。

 過ぎ去りし夢のあいだを 泳いでゆく私

 こんなにまだ好きで ごめんね

 目をとじて 小旅行 ( イクスカーション )

 ひざを揺らすのが癖だったかしら

 今思えば あなたのことは

 私がいちばん 知らなかったのね

 悩んでいた 心の中も

 好きな人ができたことは

 仕方がないと思うの

 ただ少し突然すぎたから

 言葉をなくしてしまう

 過ぎ去りし夢のあいだを 泳いでゆく私

 こんなにまだ好きで ごめんね

 目をとじて 小旅行 ( イクスカーション )

 ふいにサヨナラが 素直に云えたのは

 強がりとか悲しさじゃなく

 恋してる顔のあなたが眩しくって

 見つめるのが つらかっただけ

 ねえ 私と そのひととは

 どちらが綺麗でしょうか

 なぜかしら 叱られたくなって

 口紅 さしてみたけど

 過ぎ去りし夢のあいだに あなただけが消える

 こんなにまだ好きで ごめんね

 目をとじて 小旅行 ( イクスカーション )

こんな気分になったのも、テレビで明菜ちゃんのニュースが流れていたから・・・。明菜ちゃんの曲を口ずさみながら、彼女自身も懐かしい思い出なのだと、そう思う。翳りのある楽曲が多い彼女に惹かれたのは、陽気なロックンロールバンドに夢中だった裏返しなのかもしれないけど・・・そう感傷的にばかりもなっていられない。明日からいよいよ“新世界”への船出、次章への幕が開くのだから。