“ヤマカガシ”と呼ばれて~後編1/2

灰色を水に溶かしてのばしたような空。午後には雨が降ると言う。生温い空気に包まれて、寒がりにはうれしい月曜日だ。飛び石連休のせいだろうか、ホームに入ってきた北千住行きの区間急行は、手すりに掴まる人の数もまばら、ところどころ空席が目につく。紅葉狩りに出かけた人たちを羨ましく思いながらも、その人たちが作ったであろう、空いた座席に腰を下ろさせてもらう。

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「こんなところが外れるなんて・・・」。何が起こるかわからないのがモトクロス、これじゃあ踏んでも効かないわけだ。困ったことに都合良くスペア部品を持っているような場所じゃない。試しにフロントブレーキだけで走ってみて、技量が伴わないこともわかっていたので・・・何か代わりになりそうなものを工具箱で家捜ししてみる。ピンの代わりになりそうなボルトはあっても・・・ナットが・・・ない。

北千住駅、JRのホームもいつもほどの混雑はない。日比谷線南千住駅、高架の駅舎の向こうにそそり立つスカイツリーは、ちょうど展望階から上を雲に消し込まれている。その手前、さえない空模様を背景にした窓際には、首を直角に曲げて寝入った頭が並んでいた。寒くもなく、人いきれでムッとすることもなく・・・いい夢が見ていられそうな快適な車内だ。

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ざりぱぱさんも気にしてくれてボルトを持ってきてくれたけど・・・やっぱりナットはない。さすがに残りのクールをリヤブレーキなしで走るのはありえない。とりあえず“あるもの”で・・・と、隙間の空いたところへ、エアバルブキャップにティシュを詰めた“急ごしらえ”を押し込み、ペダルとマスタシリンダを“タイラップ!?”でつないで応急処置の完了、あとはちゃんと効いてくれるのを祈るだけ・・・。

昼過ぎにはと思っていたら、夕方まで雨が落ちてくることはなかった。このまま降らずに勤労感謝の日を迎えられたら、絶好の練習日和になるはずだった・・・けど、やはり雨は落ちてきた。少し時間がずれただけのようだ。すっかり濡れそぼった線路を手繰るように、新栃木行きの区間急行が北上していく。駅を通過する度、曇った窓ガラスが駅前のネオンに赤く滲んでいた。

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50ccのためのクラスがなくなって、クラス分けは大と小の2クラスに変更、大味な“1クール30分”で時間が刻まれていく。今日のウェアはMCの時と同じ“Twisted”。もちろんiguchi師匠が来ると信じていたからだけど・・・本人お気に入りの“緑と橙のまだら模様”を見て、ざりぱぱ曰く「ヤマカガシみたい」!!何と失礼な!と思いきや、意外と「そうかも?」と思ってしまった・・・どこか爬虫類の雰囲気がするのは確かだから。

<後編2/2に続く>