“ヤマカガシ”と呼ばれて~完結編1/2

<11/23の続き>

前のクールと同じように、気がつくと赤い#372が視線の先にいる。相変わらず車体は落ち着いていて、届きそうで届かないのがもどかしい。コーナーの出口、立ち上がっていくときに黄色の車体が見える、そのぐらいの間隔で付かず離れずの走行が続く。後ろにいるRMを意識した走りに、こちらも気持ちだけは全開で後を追う。フープスで詰まる車間がいつの間にか元に戻ってしまうのは、基礎力の違いだろうか・・・。

やはり30分は長い。先に音を上げたのは、mori-yanだった。ホームストレートの手前で左手を挙げると、そのまま減速してマシンを停めてしまう。肉迫して背後を脅かしたかったけど・・・それは叶わなかった。イバMOTO本番に課題を残したまま、最終コーナーを立ち上がる。上り勾配の頂点を切り返して坂を下っていくと、緑の車体が坂を駆け上がってくる・・・ryoだ。白地に橙の幾何学模様、今までとは違った色使いのウェアが新鮮で眩しく映る。今度は追われる側、そう簡単には譲らないよと言わんばかりに、奥に向かうストレートを“全開”で突っ走っていく。

しつこくイン側にKXをねじ込むryo。“血縁”ならではの交錯したラインで前を塞ぐワタシ。ただ、その差は確実に縮まる一方だ。どのくらいの周回を抑えられただろう・・・得意のリズムセクション、狙いすましたようにテーブルトップを並ぶように跳び出して、一気にホームストレートを抜けていく。大きく息を吐き出して最終コーナー、右手を握り直すと、見慣れない橙色の背中を追う・・・今日は心が崩れない。

過去の記憶がそうさせるのか、フープスの手前で一瞬だけ止まるように減速するKX、おかげで差を開けられないで着いていけている。差があるとすれば・・・捻りながら跳んでいる後ろを、普通に“真っ直ぐ”跳んでいることぐらい。後ろから見ていて気が気じゃないのは・・・一応父親だからか。時折小砂利をぶつけられながら、どちらも引かずに走り切ってチェッカーを受ける。スターティンググリッドの裏を並んで走りながら、右の拳を突き出すと、ゴーグルの奥の瞳が細く笑っていた。

<残り半分は次回に!>