“ヤマカガシ”と呼ばれて~完結編2/2

“魔法の券”だし、バイトもあるし・・・ryoは最後のクールを走らずに着替え始めた。走れる時間は15分、「上がってもいいかな?」と思っていたら・・・「えっ?!パパは走るんだよね?」とざりままさん。「ん?!あっ、もちろん!」と心にもない言葉で応える。ブレーキペダルも今のところ大丈夫そうだし・・・いっちょ気合いを入れて走りますか。あとは身体が15分持つかどうかだ。

元気なキッズたちに混じって、黄色いおじさんと青いお姉さん?!が走り出す。ひと頃の攻撃的な走りは影を潜めたけど、背筋の伸びた姿勢は変わらずだ。「見習わなくては」と、体幹を意識した“くの字”の姿勢でミニフープスを越えていく。上りから下り、坂の先にあるコーナーには、すっかりアウト側にラインが出来上がっていた。いきなり全開なんてことさえしなければ、何の問題もなく回っていける。奥に向かうストレートでざりままYZの前に出て、そのままフープス。無様なところを見られたくない一心で、“くの字”の姿勢と一緒に、ちょっぴり開け気味で突っ込んでいった。

ryoだけでなく、さっきのクールで転倒を喫したmori-yanもコースの外。ともすると“だらけきった”走りになりそうな“単独行”、その走りを支えたのは・・・意外にもryoだった。最終コーナーに入るとすぐ、フィニッシュラインに佇んでコースを見つめるryoが目に入る。だらけて走るわけにもいかなくなった。見えないマシンに引っ張られるようにして周回するRM。ざりままYZを探して、スロットルもかなり開いている。結局誰とも絡むことなく、静かにチェッカーとなった。コース脇から歩いてくるryoを後ろに乗せてパドックに戻る。スタンドを咬ませてブレーキペダルを見てみると、応急処置の部品は跡形もなかった。

追っても見つけられなかったざりままさんは・・・15分を走りきることなく、コースからいなくなっていたらしい。まあ、レース前だからね。続けてryoが言うには・・・「シッティングの時の姿勢がなっていない」。曰く「つま先が開いてガニ股」なんだと。まるでペッパー警部じゃないか。思えばスタンディングの時はかなり意識しているけど、座って加速している姿は、あまり想像していなかった。「こいつ、変なとこ見てんなー」と思いつつも、「ご指摘ごもっとも」と心に留めおいて、撤収を始める。今度はryoの走りも見てやらないといけないな・・・そんな親心を胸に秘め、ニセmanabuとざり家が一将祭で活躍できるよう祈りつつ、急いでWESTWOODへと向かう。“魔法の券”の引き替えとイバMOTOのエントリー、そして、欠落したブレーキパーツを注文するために・・・。