隠れ家的な洋食屋さん・・・

12時を少し回ったところで打ち合わせを切り上げて・・・遅めの昼食。八重洲から有楽町方面に歩いていく。案内係を買って出てくれたのは打ち合わせのお相手、若いながらもしっかりとした考えを持つ好青年だ。高速道路をくぐり、通りを渡ってすぐの雑居ビル。階段を覗き込んでいたかと思ったら、徐に階段を降り始める。およそ食事処があるとは信じられない地下、階段の先に、一軒の洋食屋がひっそりと収まっていた。

硝子戸を押し開けて中に入ると、カウンター席を合わせても20人ほどでいっぱいになってしまいそうな、割とこぢんまりとした店が現れる。テーブルの起き場所が絶妙なのか、狭いけど、不思議と窮屈な感じがしない。象牙色の壁に、濃い茶色のテーブルが落ち着いた雰囲気だ。ワタシと連れ、それとホスト役の三人が揃って、今日のランチ“煮込みハンバーグ”を注文する。広くない店の内には澄んだ空気が満ちていて、料理の匂いがまったく気にならない。

お盆に載せられたランチには、洋食屋らしからぬお椀の味噌汁が付いていた。しじみ赤味噌の取り合わせが新鮮だ。主役の“煮込みハンバーグ”は、飴色の玉ねぎと一緒にデミグラスソースが絡みあって、深みのある味を想像させている。カラシが付け合わされているのは、「お好みで」ということらしい・・・何とも不思議な“初体験”だ。早速箸をつけてみると、すうっと割れていくハンバーグは、箸で掴むのが難しいぐらいに柔らかく煮込まれていた。

飴色の玉ねぎも、手間暇かけて調理されているのだろう。嫌味のない食感には、玉ねぎ独特の臭みや苦みが一切残されていない。どちらかと言えば苦手なワタシが気にならないくらいまで、炒められたのかもしれない。“場の雰囲気”も一緒にいただいて、すっかり満足な三人。さくら水産とは違った“満腹感”を抱えて店を出ていく。若い感性に誘われた、ちょっぴり贅沢なランチは・・・「“転職祝い”です!」とご馳走されてしまった。何とも“幸せ”な気分のランチタイム、料理よりもその心遣いが記憶に残ることとなった。