“無呼吸”で走らされてみて・・・第五章

クラッチレバーから左の人差し指と中指が離れて、RMが前に飛び出る。人もマシンもすこぶる反応がいい。車体が横にブレることもなく・・・一速でのスタートが性に合っているようだ。出足が決まって、二速までは周りに後れを取ることもなかった。すぐさま三速に入れようと左足でシフトペダルを掻き上げたのに、これが二速のまま、なかなか三速に入らない。この一瞬の“停滞”で、左右から包み込まれてしまうRM・・・「まただ」。どうにもシフトミスが多いRM＋ワタシ。第一コーナーまでのわずかな時間でしきりに反省すると、気を取り直して中段に“居場所”を確保する・・・レースは始まったばかり、ここで折れるわけにはいかない。

のっけから全力疾走、レースらしい展開といえばそうだけど・・・何だかいつもと勝手が違う。“速度域”が違うのかもしれない。前を走るCRF150RⅡが弾き飛ばす泥粒を避けもせず、スロットルを開けて食らい付いていく。その先に見える緑の車体・・・ryoがMCエキスパートを抑えて踏ん張っている。「今までで一番の出来」と言えるぐらいに全開で疾駆するRM、しかし「イケそう」という思いとは裏腹に、一向に差は詰まらない。練習でのコースアウトが過去の傷痕を疼かせるのか、フープスで極端に速度が落ちるryo。そのままの順位を保てていられるのは・・・ベストラインがアウト側の一本しかないおかげだ。

リズムセクション最後のテーブルトップからホームストレート、CRFにかなり接近して最終コーナーへ突っ込んでいく・・・“直線番長”の面目躍如だ。練習走行では決して跳ばなかったフィニッシュラインを跳び越えて轍の海、レールに嵌まったままフィニッシュテーブルに乗っかって第一コーナーからミニフープス、そして上り勾配のバンクへ。得意の勝負所で、これ以上はない走りをしているのに・・・肉迫するだけで、どうしても抜けない。レースも中盤になれば・・・と我慢していても、何も変わらなかった。スタートしてから全力で走り続けて、レースも折り返し。スネークを下っている時、ふと肩が揺れて頭がぼぉーっとしてきた。ほんの一瞬、時が止まったような、そんな感じがした・・・。

＜明日の準備があるので・・・最終章は次回に＞