“無呼吸”で走らされてみて・・・最終章

「オレ、息してない!?」・・・何と、呼吸を止めて走っていた?!そんな極限の状態で走るのは、もちろん初めてのこと。今までのレースだったら、必ずどこかで息を抜けたけど、それが許されない世界でRMを走らせているような、そんな錯覚に陥る。一瞬たりとも気が抜けない状況、腕上がりしていてもスロットルを開けていくしかない。ミスを嫌って3台とも同じラインをなぞり、周回を重ねていく。「このままじゃあ・・・」、同じラインを辿っていては前には出られない。奥のフープスではなく、第一コーナーで勝負を仕掛ける。真ん中からミニフープスに進入するCRF、そのイン側にRMを滑り込ませて・・・ほぼ同時に立ち上がり、上りで勝負のはずだった・・・。

フロントとリヤ、両方のタイヤが、まだ水分を残した泥にすくわれる。左足を出して倒れかけた車体を真っ直ぐにしていると、その間にCRFの背中が遠くなってしまった。昼休みに歩いてわかっていたはずなのに・・・ほつれかかった緊張の糸を何とか紡いで、上り勾配のバンクにRMのリヤタイヤを押しつけるようにして加速していく。まだL1でもない。諦めるには早過ぎる。トニーやmachi-san、ニセmanabuに支えられながら、離れてしまった2台を手繰り寄せるようにスロットルを開け続ける。背後から迫るYZにも気を向けて、乾いたベストラインだけを走って追いかけていく・・・。

いよいよL1。ミスを帳消しにできるほど速度を上げられる訳もなく・・・詰まった距離はわずかだ。それでもフープスを「今日一番の出来」で通過して、ワンミスで順位を入れ替えられる間隔に詰め寄ってリズムセクション。最後のテーブルトップを跳び出し、軌跡の頂点からフラッグを持ったトニーに視線を合わせる。“熱い”声が聞こえた感じがして、最後の直線を全開で、しかもブレーキングも少し遅らせて・・・最後の勝負を挑んでみるものの・・・結果は6位、CRFには手が届かなかった。10分間を“全力疾走”できたことに満足しながら、コースアウトしていく。悔やまれるのは・・・奥のフープスで仕掛けなかったことだけ。それは次の機会まで“お預け”だ。