この歳で“前方宙返り”を披露すると・・・後が大変~後編1/2

反対側の斜面に落ちた車体は、フィニッシュラインからは見えない。女性とは言え“選手権ライダー”だ、大丈夫なら立ち上がって後続のライダーに合図するはずなのに・・・その気配がない。第一コーナーを見ても、コースに復帰した様子もない・・・。周りで一緒に見ていた連中と、急いでフィニッシュテーブルに駆け上がってみると・・・エンジンが動いたまま倒れているCRF。その先に、kusabaさんがヘたり込んでいた・・・。

両手を大きく広げて後続車に注意を促しながら、kusabaさんに声を掛けてみる。ちょっと弱々しかったけど、ヘルメットを縦に動かして「やっちゃったぁ」と一言。転び方が転び方だっただけに心配したけど、とりあえず大丈夫みたい。良かった!痛くて苦しんでいる風でもないし・・・まずは横倒しになったCRFのエンジンを止めて引き起こす。両腕に、2スト85にはない重量感が伝わってくる。さすがに走り出すつもりはなさそうなので、そのままコースの外へとCRFを押して出ていった。kusaba家のパドックへと押し歩きながら、「よくもまあ、この重い車体を」・・・どちらかというと華奢な身体は、モトクロスウェアよりも普段着の方が似合うくらい。重く大きな車体に加えて250ccマシンのパワー、それを男衆に交じって、しかも後れを取ることなく走らせているんだから・・・ホント大したものだ。

砕け散ったヘルメットのバイザーが哀しいけれど、唇を切っただけで大事には至らず・・・北海道大会以来の”DV事件”に発展しなくて良かった?!と喜ぶkusabaさん。愛機を手渡して「身体、丈夫に出来てます?」と意地悪く聞いてみると・・・「そんなことなーい、こんなにか弱いのに!!」と明るく笑って、マシンにセンタースタンドを合わせている。切れた唇を見せないように手を当てている姿は・・・やはりレディースライダーだった。

<散水が招いた“最後の悲劇”は・・・次回に>