返したくても返せない・・・7

フロントタイヤを半ば強引に差し込んでくるYZF。右のふくらはぎには、もう何度かタイヤの感触が伝わっている。かなりの気合いだ。その気持ちを削ぐように、リズムセクションの手前で“周回遅れ”のマシンを挟んでみた。ホームストレートの入口には、saitoさんが姿を見せている。「これで持つかな?」と、ホームストレートから最終コーナーに入っていくと・・・視界の右隅、すぐ後ろに青い車体が迫っていた。コーナー一つ分、ちょうど立ち上がるときに進入してくるはずが・・・想定外の展開に、少し焦りを感じる。

執拗にRMのインを攻めてくるニセmanabu。フープス、ビッグテーブルと何とか抑えてきたけど・・・そこまでだった。リズムセクションで前に出たYZFが、そのままの勢いでホームストレートを加速していく。本番でもこの勢いがあればね・・・と思う間もなく、右手を握り直してスロットルを開ける。ただ、さすがはフルサイズ、85マシンとは車速の伸びが違う。この展開から追い上げるのは、かなり難しい。saitoさんがチェッカーフラッグを準備していたし・・・最後の一周、あとはワンチャンスをものにできるかどうかだ。

これ以上は寄れないと思えるほど、イン側を締めて走るYZF。まさに本番さながら。ミニモト相手に大人げないと思いつつも、精神的に追い込むほど車間を詰めることもできず、YZFが破綻をきたすこともなく・・・コーナー半分ぐらいの差で、そのままチェッカーとなった。左手を空に向かって突き出し、大きくガッツポーズを取るニセmanabu。よほどうれしかったのだろう。とは言え、その姿を目の当たりにすると、やはり面白くはない・・・。

<友人思いの“悪戯”とは・・・次回で終話>