恵みの雨ならぬ雪!?~第3話

1本しかなかった新品の「BR9ES」は、KXに使ってしまった。RMのプラグは買ってこないといけない。その前にリヤタイヤとスプロケットの交換だ。チェーンを外してから、”建て付け”の悪いリヤのアクスルシャフトを叩き抜いて、リヤホイールを取り外す。エアバルブを取り去ると、プシューと気持ち良く空気が吐き出される。そのままホイールを寝かせて、両足の踵でタイヤを踏みつけるようにしてビードを落とす。夏でもないのに、割とあっけなくビードが落ちて、次はタイヤレバーの出番だ。

歯が欠けるほど磨耗したスプロケットは、何かの拍子で手をぶつけると、それこそ痛い目を見そうだ。手元を誤っても流血騒ぎにならないように、スプロケット側を下にして、ホイールのリムとタイヤの隙間にタイヤレバーを刺し込み、ビードをめくっていく。ピレリのタイヤは程良くたわんでくれて、誰かが言っていたように「タイヤ交換がうまくなった」気にさせてくれるほど、簡単にホイールとタイヤがバラバラになった。

タイヤが外れたホイールの内側には、ゴムのかすがこびりついている。それも満遍なく、びっしりと。他のメーカーだと、ここまでになることはない。この辺りが、ピレリのタイヤが持つ“しなやかさ”の秘密なのだろうか?ただ、この“タイヤかす”を取り除くのは、もちろん予定になかった作業だ。しかも、薄くこすりつけられたゴムをきれいに取り除くのは、かなり面倒。プラスチック製のヘラと自分の爪で、地道に削り取っていく。黒い異物がはがれて、光沢のない銀色のアルミ地が見えてくると、いつしか作業が楽しくなって、つい夢中になってしまう。床から冷えきったコンクリートの感触が伝わってこなければ、時間をかけて、完全に取り去れたかもしれない。

<次回に続く>