タイヤの神様~1/3

「悪口言ってるから・・・」。左腕に脱いだヘルメットとゴーグルをぶら下げて、ハンドルとフロントタイヤの向きが合っていないRMと一緒に、どうにかパドックまで戻ってくると、tasakiパパにたしなめられた。右肩を強く打ちつけたせいで、肩の関節が少し浮き上がったように落ち着かない。動かしても大丈夫だから外れてはいないはず・・・だけど、腕が引っ張られるような方向に少しでも力が入ると、痛みで眉間にしわが寄って、左目だけがつぶれたように細く閉じる。散水直後のホームストレート、それほど無理したつもりはなかったのに・・・派手にやらかしてしまった。

リヤタイヤを交換したことに満足して、フロントはよく見ていなかった。リヤタイヤ2回にフロントが1回、そのぐらいにしか考えていなかったから、フロントタイヤを替えるのは、次の機会だと決めつけていた・・・その考えが間違っていた。気づかされたのは、マシンを積み込む直前。先に積み込むRMのフロントタイヤを見ると、両脇のブロックがほとんど無くなっていた。まさかフロントタイヤがここまで摩耗するとは・・・ピレリのタイヤは硬い路面には相性が悪いようだ。そう言えば、前に履いていた時も、減るよりも早くブロックが飛んでいたっけ。その時はリヤタイヤだったけど。

朝からコーナーでの食い付きは悪かった。とくに右コーナーは、ちぎれて無くなったブロックのせいで、何度も外側に流される始末・・・タイヤのせいにするのは気が引けたけど、このタイヤじゃあ、もう無理かもしれない。そう思わないとやっていられないぐらいだ。それでも結構楽しく走れたのは、これもタイヤのせいにする訳じゃないけど、リヤタイヤを替えてきたから。そして、この前は元気なく走っていたokano師匠がイン側をグイグイ挿してきて・・・その師匠らしい走りに、うれしいぐらいに気分が乗っていたからだ。ただ、小言が天に聞こえてしまったのか、気分だけでは乗り切れなかった・・・。

<次回に続く>