タイヤの神様~2/3

薄雲が広がったかと思えば、太陽が顔を出す。この季節でも、真っ正面に太陽を仰いでいれば、顔が陽に焼けて赤くなってくる。何となくヒリヒリしてきた頬を触ると、熱を持ったように熱い。きっと“リンゴほっぺ”になっているのだろう。「軽く散水してあるので、注意して走行してください」。Aクラスからの走行を前に、いつもの名調子がFMを遮ってパドックに流れていて・・・午後の走行が始まる。saitoさんの言葉に間違いはなかった。確かに滑るけど・・・kudoさんに文句を言うほどではない。そう、今日のRM85Lは、普通に走っていても滑っているから。日向を中心にうっすらと湿ったコース、午前中は“きな粉”のように白く色が飛んでいたところも、輪郭がはっきりした濃い茶褐色に染められている。身体が暖まってきたのか、滑るのに慣れてきたのか、”軽い”散水に気を良くした三周目、最終コーナーの入り口で“事”は起きた。

たぶん少し傾けながらフロントブレーキを握ったのだろう・・・ただ、それは後から考えてそう思っただけ。ホームストレートの加速を終えて、コーナー進入の準備を始めた次の瞬間には、もう身体が右肩から路面に落ちていた・・・というのが正しい。その上に覆い被さるRM。自分でも何が起きたかわからないうちに、すべてが終わっていた。右の上半身に鈍い痛みが広がる。起きあがろうにも、マシンが邪魔して、うまく抜け出せない。半殺しにあった虫のように、地べたで手足をバタバタ動かしていると、カワサキ#31さんの”お弟子”さんが「大丈夫ですかー」と、RMを引っ剥がしてくれた。助かった・・・そう、久しぶりに、心からそう思った。「助けてくれてありがとう」の思いで、左手を上げて、スターティンググリッドにマシンを押していく。右肩が痛くて、ハンドルを支えているのが精いっぱいだ。

<フロントからクラッシュはかなり痛い・・・次回に続く>