ホワイトバレンタイン

アスファルトから跳ね返る雨音が聞こえなくなって、いつしか夜は明るさを増していた。ホワイトクリスマスならぬ、ホワイトバレンタイン。あと20歳若かったら、きっとはしゃいで過ごす街の灯りが、降りしきる雪の粒をぼんやりと映している。花粉症にとっては、この湿り気だけがうれしいとは・・・さみしい2月14日だ。

電車の窓も白くぼやけていて、通り過ぎる駅前のネオンが、乾ききらない水彩画に水を垂らしたように薄く滲んでいる。妖しげな発色でにぎわいを鼓舞する街は、すぐに消えて、また新しい街が滑り込んでくる。そして、また消えて・・・それを何度も繰り返すと、ようやく帰る家のある駅にたどり着く。踏切の音が鮮やかな赤い点滅とともに、ゆっくりと流れ去っていった。

あきれるほど降り続ける雪は、それでも音を立てずにゆっくりと足下を埋めていく。白く、白く、白く・・・。駐車場のBongoが、一回りも二回りも大きくなって、白に埋もれていた。ホワイトバレンタインなんて、浮ついたことも言っていられなくなるほど、雪は深く冷たく積っている。ただ、この雪でうれしい“お泊り”になる二人も、必ずどこかに居るはず・・・今となっては、何とも羨ましい話だ。