白く明るい光の中で・・・

少し寝坊できると思っていたのに、まんまと目論見が外れてしまった。夜明け前には雪が雨へと変わり、アスファルトの雪は、こぼれたかき氷のように、ビチャビチャと形を失い始めていた。そのくずれた氷を踏みわけるようにして、新聞配達のバイクが走っていく。とてもクルマが走れなくて・・・とは言えない状況だ。

いつもの時間にいつもの電車がやってくる。いつもなら春日部までは満席なのに・・・空席がちらほら・・・最初から座っていけるなんて、雪に感謝だ。色を無くしかけた歩道と違って、真っ白な雪の上を滑る東武線。二本のレールがまっすぐに、平行に続いているのを目で追いかけていると、どこか雪国にでもやってきたような気分になってくる。足下の暖房と窓の外の白さが、不思議にしっくりとしていた。

昼前に得意先へと出かける。遅れてやってきた春を思わせる光が、汚く融け出した日向を乾かし、日陰だけを忘れたように白くそのままにしていた。新宿で小田急線の急行に乗り換えて、高架の上を揺られて走る。雪をかぶった屋根瓦に陽射しがまんべんなく降り注ぎ、行き先の“江ノ島”まで足を伸ばせたら・・・どんなに楽しい午後だろう。そんな邪な思いつきにさえ、太陽は等しく光を届けてくれていた。

目的地のひと駅手前、多摩センターの駅から、町並みをのぞき込む。近くに何もなくて、駅舎ばかりが妙に立派だったのがずいぶん遠くに感じられるほど、景色が変わっていた。広がる丘陵地帯にはマンションが建ち並び、プラットフォームの上をモノレールが蛇行して延びている。あれほど広く大きかった空が、こんなにも狭く小さくなっていた。学生時代からもう30年・・・町もだいぶ成長したようだ。