武者修行と言うには・・・あまりに情けなく~第四話

コーナーのたび、隙をうかがうようにフロントタイヤをちらつかせるkazu。絡んで走るのは昨夏の“モトパーク森”以来、フルサイズマシンにも慣れて、調子は“右肩”上がりのようだ。林の中、下り坂で一瞬離れるものの、全域で速度が乗っているCRF。午前中、それも走り始めとは思えない快走で、RMの背後に迫ってくる。かなり腕を上げたようで、まだ一本目のワタシは完全に気後れ・・・たじたじだ。そんな状態が、どのくらい続いたろう・・・上り4連ジャンプの入口で、インを奪ってCRF250Rが前に出てきた。前の周と同じ展開、同じようにアウト側からスロットルを当てて並ぶつもりが・・・マシンが右に流れされて万事休す。やられた!

追いかけているつもりなのに、kazuの背中は少しずつ離れていく。気持ちばかりが焦って、コーナーの立ち上がりでは、リヤタイヤが空回り。駆動力までがすっぽ抜けて、右に左にと不用意に滑り出す。結局コースを一回りする間では詰め切ることができず、kazuがそのままコースアウト。交わされてからはそれなりに速度を上げたはずなのに・・・ちょっと悔しい。そして、気を入れ直して、もう一息攻め始めた矢先だ。林の最も奥、コースの一番低いところへと続く直角右コーナーで、イン側にすばやくフロントタイヤをねじった瞬間だった・・・。

あっさりとフロントタイヤが摩擦を失う。何の抵抗もできないまま、一本目から転倒。しかも右肩から・・・。ほとんど止まるような速度まで落ちていたのに、右肩に、はっきりとわかる痛みが走る。いつもならすぐに復帰できるはずが、あまりに痛くてRMを起こせない。後続を気にしながら、左腕と身体全体でもがくようにして、何とかマシンを立ち上げる。左手で右腕をつかんで、スロットルグリップを握れる位置まで持ち上げる。「一本だけでおしまいかぁ」・・・納得しようのない転倒、スタンディングもできずシートに腰を下ろしたまま、情けなくパドックへと帰還していく・・・かなり痛い。

<意外と丈夫だったワタシ・・・次回に続く>