招かざる“春の厄介者”がやってきた

光が満ちて、何でもできる気にさせてくれる。天気予報どおり、人も街も、春の陽射しに眩しく照らされている。ガラス張りのしゃれた高層ビルに太陽が映り込んで、思わず目が細くなる。見上げると、飛行機雲がすうっと伸びていて・・・空はどこまでも上品な青色を見せている。そよ風というには少し強い風が、枝振りだけの街路樹を震わせていた。

長引いた会議が終わると、午後1時になっていた。駅前の雑居ビル、その地下に潜り、500円の「唐揚げ定食」でご飯をおかわりしてから地上に戻ってくると、色香をまとった風が吹き渡っていた。南からの風は、強めな春色。階段を駆けあがり、道路を越えて、通りへと流れていく・・・信号待ちの女性のスカートを揺らすのは、春風ゆえか。

アジア系の猥雑な感じがたまらない秋葉原で、総武線から山手線へと乗り換える。春一番が運んでくるのは、春の陽気だけではない。塵やら埃やらと一緒に、この時期の厄介者“スギ花粉”を舞いあげながら、山手線が入ってきた。車内の空調機から吹き出される風が、瞳を潤ませる。2ヶ月の長丁場、いよいよ“春の陣”が始まった。