「アルミ合金むき出し」と言えば・・・

都心に向かう朝の通勤列車、左手で吊り革を握ると、視線が窓の外ではなくて右の掌に落ちる。IS03でメールを確認し終えて、軽くニュースクリップを閲覧、気になった記事をブラウズして・・・一応“スマートフォン”を持っていることだし、今時のデキるサラリーマンの真似事ぐらいはしてみたりもする。ただ、“気になった”記事というのが問題で、経済にはどうにも目が向かず、政治や社会問題も興味は人並み・・・惹きつけられるのは、少し気のきいたタイトルの記事ばかり。でも、昨日の朝は・・・結構当たりな記事だった。

「ピカピカ!アルミ合金むき出し…みずほ・さくら」。読売新聞のクリップだけど、惹かれたのは“アルミ合金むき出し”の文字。ワタシと同世代なら同じマシンを思い起こしたはずだ。もちろん新幹線じゃない。モノコックボディのKawasaki“KR500”・・・カワサキがGP最高峰の500ccクラスに挑戦、送り出した最初で最後のマシンだ。全身を得意のライムグリーンに染められることなく、タンクは“アルミ合金むき出し”。無言の迫力のようなものを感じた車影がまぶたに浮かんできた。

12日に開業が迫った「九州新幹線鹿児島ルート」で使用される新型車両「みずほ」「さくら」の製造工程の記事だった。8日、ちょうど車体の骨組みにアルミ合金を張り付ける作業を切り取って、「ピカピカ!アルミ合金むき出し…みずほ・さくら」のタイトルとなったわけだ。製造元は“川崎重工業”の兵庫工場、奇しくもKR500と同じ故郷に、記憶の扉は全開となって・・・時は一気に30年ほど巻き戻っていった。

すべてが“発展途上”だった80年代のGPシーン。シーンを彩るマシン達は、決して訪れない“行き着く場所”を探し求めて、1gでも軽く、0.1馬力でも強力にと、日々進化するのが当たり前だった。先導は日本の4メーカー、そして主役はいつも2サイクルマシンだった。たとえ行き過ぎていたとしても、たとえ間違っていたとしても・・・それを補って余りある“勢い”があったあの時代・・・記事に添えられた九州新幹線の“アルミ合金むき出し”カットは、GPシーンに2サイクルマシンがいないことが、いつしか気にならなくなっていたワタシにとって、昔の“勢い”を思い出させてくれる一枚になった。