冬の名残のにごり湯紀行~第三話

<3/5の続き>

湯ノ湖に差しかかると、道端の雪も高さが増してきた。左手に広がる湖面が白く濁っている。凍っているのだ。全面氷結とまではいかないが、雪の白さとは少し違う、磨りガラスをもっと曇らせたような鈍い白さが沖へと続いている。その湖の曲線に合わせて道が大きく左に曲がると、湖畔のバス停に到着。開けた視界には、雪と陽射しの眩しさがあふれていた。さっきホテルから乗り込んできたスキーヤーが揃って湖畔に降り立ち、深呼吸をしている。これから湯ノ湖の散策だろうか、ペットボトルの水を口に含ませては、大声で何か話していた。

湯ノ湖を離れ、国道120号線から少し分け入ったところでバスがエンジンを完全に止める。路線バスの終点「日光湯元温泉」だ。荷物を抱えて、予約していた宿へと歩いていく。雪の回廊は、いかにも形が悪く、街の埃を吸い込んで薄く茶色にすすけていた。バス停から3分ほどの距離に立つ旅館は、雪国に良く見られるような、二段構えの玄関が心地良い広さを持っていた。

チェックインにはまだ早い時間。フロントに荷物を預けて、近くにあるというスキー場まで歩いてみる。道々、高く積み上げられた雪が融け出していて、歩道を濡らしていた。融けた雪は、ところどころ凍っていて足下を危うくしている。頭の上では、スキーヤーに気の毒な陽射しが、汗をかいて崩れかかった手製のかまくらに、ただ光っていた。ふわっとした綿菓子を思い描きながら指先を立ててみると・・・一度溶けてから固まった表面の雪は、結晶同士が密になり、本来の柔らかさを失って・・・氷のように冷たい板切れになっていた。

<雪の温泉場で出会ったのは?続きは次回に>