春眠、夢を誘ふ

夢を見た。歳を取ると、寝ている間も夢を見なくなるんだなあ、と思っていたけど・・・そんなことは無いようだ。ただ、この前、いつ、どんな夢を見たのかは、思い出せない。それほど、ずっと時間が経ってしまっていた。それでも長引く右肩の痛みと花粉症で寝苦しかったのを忘れてしまうほど、文字どおり“夢”のようなひととき。身近なところに色付く季節が近づいてきたのが、よほどうれしかったのだろう。

夢はいつも無邪気でいい。誰にでもなれるし、何でもできるし、どこにでも行ける。今まで性別が変わったことはないけど・・・それすら叶えてくれそうだ。今回は二階建てのバスの運転手、おそらく観光地を周遊するバスを回送しているようだ。海沿い、いや海の上を、延々とS字が繰り返される道。照り返しが強烈だ。真っ青な空の下、車高の高いバスがふらふらと海風に煽られている。夢とは言え・・・なかなか芸が細かい。

感覚的には「西湘バイパス」を西から東に向かって走っているようだけど、場所はそこではない。緩い弧を描いた海岸線に白波が続き、その先のパーキングエリアに、屏風のような山脈が覆いかぶさっている。山の頂には残雪が光っていて、空の青を背に、稜線が眩しい。間違いない・・・雪解けが進む、春の立山連峰だ。「雨晴海岸」の近くを富山の街に向けて走る海岸道路・・・ありもしない道路をひた走っていた。

右にウインカーを出して、パーキングエリアへの坂道を下っていく。本線から右側に逸れていくのが、夢らしい状況設定だ。大型バスを収める場所がなかなか見つからず、砂浜にある“迷路”のような駐車場へと促される。バスなのに砂浜?・・・きっと、能登半島の「なぎさドライブウェイ」が記憶の再生回路に混ざり込んだのだろう。相変わらず陽射しは眩しくて、もさもさ走る大型バスにも周りの視線は優しくて・・・。

ちょうど砂浜の細い道から出ようとしたところで、目が醒めた。何が富山の記憶を呼び起こしたのはわからない。春の連休で走る機会が多かったからだろうか・・・最後のツーリングが能登だったから、もしかしたら呼んでいるのかもしれない・・・また、バイクで来いよ!と・・・。満開の桜には間に合わないけど、砺波平野を彩るチューリップにはいい季節だ。春色を巡るツーリングも悪くない・・・“季節”が良くなって、行けるといいな!