埃立つ乾いた路面と馴染みの微笑に・・・気分は上々!~終

別に焦ったわけでも、怖くなったわけでもない。むしろ調子に乗っていたぐらい。第一コーナーを外側から立ち上がり、スロットルを開け気味にしてフープスを跳ねていく。前の周、その前の周と何も変わらない。最後のコブを越えてからは、スロットルを中間に固定。少し車体を右に倒しながら、垂直にさえ見える壁にリヤタイヤを合わせていく。ホントに何も違わないはずだった。と、右に傾けたRMが、何かに弾かれたように起き上って・・・数秒後には横倒しになっていた。

ずいぶん無様な転び方をしたものだ。しかも得意の上り勾配で失敗するとは。後ろから猛然と追いかけてくるiguchi師匠に気圧されたのか・・・okano師匠を追いかけ過ぎて力を使い切ったか・・・。いずれにしても、失敗したことに違いはない。あと1、2周も抑え込んでいれば、iguchi師匠の前でチェッカーだったものを・・・もったいないことをした。悔しいほどに残念だけど、なぜか笑顔になってしまうのは、みんなのおかげだ。

後ろを抑えるiguchi師匠に、RMをパドックへと連れて帰るokano師匠。RM-Z450を停め、座り込んだ姿を心配そうに見つめる#329のT。「もうチェッカーだし逆走していいから」と言い残してスタート地点に走っていくsaitoさん・・・ゴーグルだけ外して、のんびりとBongoへと戻る横から「大丈夫っすか?」と声が届く。声の主は、すっかり速くなった#314。ryoとワタシが、たまに「KXのあんちゃん」と親しみを込めて呼ぶ彼も・・・馴染みの顔だ。

ここの“みんな”に触れ、土埃を嗅ぎ、沈みがちの気分は風に流されていった。「やっぱり乗りたくなっちゃってな」・・・還暦間近の師匠も言うとおり、バイクが好きな奴はどうしようもない。乗れない日が続けば、どうにも元気がなくなっていく。振り向けば、地割れから立ち直ったMX408に、太陽が強い陽射しを届けていた。季節もしっかりと巡っている。無駄に派手にとはいかないけど、花の季節に相応しい、気分よく過ごせる“空間”を大事にしたい。まあ、まだ転ぶには早かったようだけど・・・。