4月12日AM

#01:朝

雨上がり、晴天。強風。花粉症にとっては我慢の朝だ。広くて青い空の下、右の鼻は詰まり、目がかゆい。50枚入りのアイソレーションマスクは、気休めに過ぎない。駐車場から駅へと続く道路は、南北に細い一本道。風は正面から、強い向かい風だ。なかなか手放せないコートは北風に舞い、指先が冷たくなっていく。ただ、背負った陽射しは、天気予報で言うほど弱くはなかった。温もりよりも、もっと力のある暖かさが、肩から背中へと広がっていく。

#02:伊勢崎線

空席の目立つ車両に乗り合わせたおかげで、東武動物公園から座れてしまった。ついている。右隣は細身の女性、腕の自由が利いて楽だ。ふと向かいに目をやると、腰を下ろした大柄のサラリーマンが両脇を男性に囲まれて、窮屈そうに肩をすぼめている。弱めの暖房に不満げだった足下へ、男性三人の頭の上から入り込んだ陽射しが当たる。ヘッドホンに流れるのは“Strutter”、demo versionだ。ポールの若い声がエースのリフと絡み合うKISSのデビュー曲は、“希望”と“未来”にあふれていて、朝にはとても具合がいい。

#03:地震

草加駅を出て間もなく、ヘッドホンに聞き慣れた警告音が鳴り響く。“緊急地震速報”だ。ほぼ同時に、電車が急停車。停まった車両で揺さぶられるのは初めてのこと。後ろを振り返るようにして窓の外を見ると、青のまま、信号機が“頭”を大きく左右に振っている。かなり強い地震だ。それでも揺れは数分で収まり、ほどなく北越谷から上り方で“通常運転”が再開される。変わらぬ速度で走り始めた区間急行は、4分遅れで北千住に到着した。

<PMに続く>