凹んでばかりもいられない

7:34am

せっかくの陽射しも、黒いスーツを相手に吸い込まれるばかり。春を過ぎて、明るい光が輝いて見えるのは、街を往く女性の脚線。黒いタイツにつつまれていた柔らかなふくらみが、薄いナイロン越しに生き生きと動いている。何もかもが4月を引きづっている朝の駅舎に、太陽が静かにはっきりと入り込んでいた。

8:45am

長い休み明け、代わり映えのしない黒にピンストライプの上着を脱いで歩いてみると、辺りがちょっぴり色濃く映るような気がした。緑のむせ返る若い生気にあふれた匂いが、鼻腔から脳に届く。初夏のほんの少し手前、沈んだ気持ちが内から外から英気をもらって、息を吹返すようだ。

8:13pm

明日の昼には雨模様、それが嘘ではないと、ぼんやりと雲に覆われた月が言う。アスファルトとREGALのかかとが、いつもより低い音を立てる。低い気圧のせいだろうか・・・。駐車場から出ていくBongo、フロントスピーカーから聞こえる音域の狭い甘えた声に、明るい心が戻ってくる。

あなたが狼なら~、怖~くな~い~♪・・・小恥ずかしいことしか思い出せない時分のアイドル“真子ちゃん”の歌声に合わせて、大合唱だ!