夜更けのネロちゃん

眠い。夜も更けた午前二時、ネロに起こされたからたまらない。玄関から聞こえる甲高い鳴き声に、一度は頭からフトンをかぶってみたものの・・・切なく吠えるときは、かなり危ない。しかたなくベッドから起き上がって、階段を下りていく。メガネを外したままの“世界”は、輪郭のない、ただぼんやりとだらしなく色が組み合わさっているだけ。遊園地によくある“絶叫マシン”に乗りたがらないのは、単純に怖いという他に、こんな世界を見たところで「面白くも何ともない」からだ。とは言え、視界がはっきりとしていたら・・・怖くて絶対に乗らないけれど・・・。

一度間違えて差し出した手に、ネロの絶叫は頂点に・・・その瞳は「遅いよ、何してたの!」と言わんばかり。ワタシは、人見知りのひどいネロがわがままを言える数少ない人間だ。急いでゲージの扉を開けると、玄関から外に向かって吠える、吠える。これは危険。リードをつける間もなく、わずかに開いた玄関のアルミ扉から飛び出していくネロちゃん・・・身体の大きさといい、俊敏な動きといい、まさに“脱兎のごとく”Bongoの脇の草むらへ・・・裸眼のワタシには、もはや捕捉は不可能だった。

身軽になったネロは、そのまま逃走。5分ぐらい真っ暗な団地の中を自由に“跳び”回って、ようやく帰ってきた時には、嘘のように落ち着いていた。そのまま抱き上げてゲージに戻すと、パタンと横になる。「やれやれ」と二階に上がって、こちらも横になってはみたものの・・・すっかり目が冴えてしまったようで、なかなか寝付けない。サイクリング疲れとはっきりした頭が混沌としているウチに・・・携帯の目覚ましが鳴り始めた。その音を聞きつけてか、二度目の甲高い声が耳に届く。「まったくおまえのせいで」・・・階段を一歩ずつ下りながら、keiとryoがネロをいぶかるのも、ちょっとはわかった気がした。