CRAZY, CRAZY, NIGHTS

Bongoには懐かしい“歌謡曲”からK-POPまで、多様な旋律が流れる。朝から大声を張り上げることもあれば、暗い夜道、ヘッドライトに浮かぶアスファルトに語りかけることもある。ときに鼻唄雑じりにレディー・ガガを歌って“当世風”を気取っていても・・・それはすべて帰る場所があるから。クルマを降りてヘッドホンから聴こえてくるのは、今日も同じ。IS03に収まっているのは『KISSTORY』の5枚。いつものようにランダム再生しながら大きく深呼吸すると・・・少し湿り気のある膨張した空気が、胸いっぱいに広がるようだ。

著作権が切れて読み放題の古典文学を、親指でめくりながら仕事場へと向かう。ヘッドホンからは、ただ曲が流れているだけで、ほとんど耳には入ってこない。途切れ途切れ、ポールの艶っぽい声が聴こえてくるのは・・・ジーンよりも数多く“KISS”を歌っているからだろう。今となっては“空気”のような曲ばかり、それでもひとつひとつの曲には思い出が滲み込んでいたりする。『CRAZY, CRAZY, NIGHTS』・・・タイトルどおりKISSらしく明るい一曲には、そんな曲調とは裏腹に、若く苦い記憶がよみがえる。このアルバムがkeiからの“最後の贈り物”になっていたら、今頃ryoは、いなかった・・・。