ひさしぶりにバイクな週末~後編2/2

古河から国道4号線で埼玉へと渡る手前、信号待ちをしている腕に冷たく雨粒が落ちてきた。まばらだけど、唐沢山のときよりも、落ちてくる間隔が短い。「とうとう降り始めたか・・・」、気落ちしながらも利根川を越えれば埼玉県。今は加須市になった栗橋町から杉戸までは、30分ほどの距離。何とか濡れずに帰れるかな?そんな思いを抱いて、国道4号線利根川橋の上。スタンディングして辺りを見回すと・・・佐野の街を抜けるときに見ていた空の明るさが、すっかり消えて無くなっていた。思わず握ったクラッチレバーを無造作に離してみたけど、何も変わることはなかった。

栗橋に入ってすぐ、国道125号線と分岐する交差点で信号につかまった。わずか数十秒の間にも、雨の勢いが増してくる。青信号を待って左折。濡れて光る横断歩道に“脚”をすくわれないように、慎重にステアリングを操作する。県道へとつながる、利根川の土手に寄り添うアスファルトは、すでにビチャビチャになっている。雨を感じてから、まだ数分と経っていないのに、雨脚は強まるばかり・・・そこから数十メートル走る間に、道はすっかり水浸し。しぶきを上げて降りしきる雨は、真夏の雷雨か台風を思わせる。

容赦のない雨に、Tシャツが胸板にべったりと貼り付く。雨は背中を流れ、パンツの中を通って・・・太股辺りから滴り落ちていく。スニーカーの中は、たぷたぷと水だらけ。シフトする度にぐちゅぐちゅと不快な音と感触を残して・・・もはや靴ではない。素肌に当たる雨と言えば、まるで氷の粒ように、烈しくて痛い。目の前には水煙が広がり、視界も奪われて・・・寒さに耐えるように肩が強ばっていく。信号で停まる度に「もう少し!」と、ryoに声をかける。オフロード用のヘルメットを被るryoは、頬にも雨が当たって「痛い痛い」と叫ぶばかり。でも、こいつが居なかったら・・・折れた心に冷たい雨が入り込んで大変だったろう。

赤信号から発進すると、一度停まって緩んだ身体が再び冷雨にさらされ・・・一瞬にして縮みあがる。川のように横たわる水の流れを何本も踏みつけて、何とか最後の曲がり角。信号のないT字路を右に曲がると、あと数百メートルで我が家だ。狂ったように降る雨に、団地内のアスファルトがよく見えない。カーポートの下、わずかに乾いたコンクリートの上にEXC-Rを停める。その後ろにryoがXR230を着ける。とてもそんな短い時間とは思えない、寒くて冷たい30分を走り切って、ホッとしたような嬉しいような・・・。「風呂、風呂!」と騒ぎながら、ヘルメットを被ったまま玄関に走る。なぜだか二人とも笑顔で家の中へ・・・半日にも満たない、それでいて凝縮されたツーリングだった。