TECH21

次の打ち合わせまで、まだ30分以上ある。色のないビルに当たりながら、風が八重洲の街をそよいでいく。コンクリートの歩道に落ちたビル影、陽射しが跳ねかえって白く光る車道・・・梅雨の晴れ間と言うにはまだ早いけど、乾いた晴天が今日だけというのは・・・五月らしくない。

こんな中途半端な時は、本屋にかぎる。八重洲ブックセンターに寄り道して、エスカレータで地下へと下りていく。地下1階は、雑誌売り場だ。バイク関係の雑誌は、エレベータから降りて右手の奥にいったところ、一番隅の一角だ。“DIRT SPORTS”を始め、24日発売の真新しい雑誌が、きれいに並べられている。

そんな中、平積みの雑誌に、思わず顔の動きが止まった。およそ雑誌の表紙にあるまじき色使い・・・白い背景に、薄紫の車体が浮かんでいる。その車体は右側に傾げていて、これもバイクの“構造上”あまり見られない構図だ。ヘッドライトの軌跡もうっすらと再現されていて・・・ワタシの年代なら、誰もが記憶している“8耐マシン”。#21を付けたヤマハYZF750Rは、“キング”ケニー・平忠彦組のマシンだ。

スタートの出来過ぎた“演出”と、信じられない7時間30分後の結末・・・TECH21チームが見せた劇的なレースは、見たくて見られるものじゃない。表紙の後ろに詰まった数多のイラストとテキストが、往時の勢いを思い出させてくれた。