昔の清里、今何処

国道に沿って高原キャベツの苗が、いくつもの列を作っている。その列をまたぎながら、なだらかな起伏を目で追っていくと、地平線が雲に吸い込まれていく。いつもなら雄々しい稜線をゆるやかな曲線のうちに見せる八ヶ岳も、今日は雲の中・・・わずかに覗く山裾の切り上がりだけが、その先に雄大な景色が広がっていることを伝えていた。

小海線と並んで走る国道141号線。ここを走るのは珍しくはないけど、Bongoと連れ立ってとなれば、話は別だ。おまけに後ろに積んでいるのは“ナノハナ”ではなくて、シロとネロ。これは初めての経験だ。野辺山を左手に見て、国道141号線を直進。北杜市に入ると、そこまで我慢していた雨が、再びフロントガラスを濡らし始める。梅雨入りの発表は、やはり伊達じゃなかった。

パステルカラーの塗装がはげかけた建物には、「売物件」「貸物件」と貼り紙されたシャッターが下ろされている。若者でごった返す清里の面影はまるでなく、ただ雨に打たれているだけだった。歩道を歩く人影もまばら、指を折って数えられるほどだ。賑やかに楽しませてもらった街の、あまりに変わり果てた姿は、哀しさを覚えて見つめるほかなかった。