半額“生パスタ”~後編

昼時で、カウンターを除けば、ほぼ満席。しばらく待って、最初に運ばれてきたのは「トマトソース」の方。ただ、何かちょっと違うような・・・。運んできたのは店の主人だろうか、どうやらオーダーを間違えてしまったらしい。「すみません。麺がほうれん草を練り込んだ平麺になってしまうのですが・・・お値段をお安くしますのでいかがでしょうか」と言う。ちょっと普通の麺にも未練があったけど、また来ればいい。ほんの少しの間があって「いいですよ」と答える。「ありがとうございます」と、ホッとしたような申し訳ないような、どちらとも取れる微笑みを浮かべて、真四角なパスタの皿を静かに置いていった。

すぐに「クリームソース」の方も揃って、いよいよ実食!フォークで麺とソースを馴染ませてから、ベーコンと一緒にすくい上げて一口。平打ち麺だからか、濃い目のソースがうまい具合にからんでいる。生麺らしい適度な粘り気と歯ごたえに、ハシならぬフォークが進む、進む。口に運ぶのが楽しくて仕方がない。すぐ目の前の「クリームソース」も、透き通るような白さのスープが麺全体を包んでいて、見るからに美味そうだ。実際、味もかなりのようで、「美味しい」を繰り返しては、ひっきりなしに麺を頬張っている。

外れるどころか、二人とも満足して席を立ち上がる。時間に余裕があれば、100円足して“お茶”していくところだけど・・・迷っていたせいで、もうすぐ昼休みが終わってしまう。「お代は“半分”で結構ですので」の言葉に甘えて、半額の生パスタになってしまった。麺が違うだけで、いつも“ワンコインランチ”よりも安い昼食に・・・何となくウキウキした気分でロータリーの方へと歩いていく。今思えば・・・宝くじでも買っておけば良かった。二度はないだろうから・・・。