続:ザリガニは確かに赤いけど・・・

利根川に沿った農道を出て、国道6号線利根川を渡る。EXC-Rなのが、新鮮だけどどこか淋しくもある。取手の街中を抜けて、小貝川を越える頃には、水田を渡る風がいくぶん冷たさを感じるようになっていた。頭上に広がる大きな空に、一筋の飛行機雲。蛇行した軌跡は、今の乱れた心持ちと重なり合う。そのすぐ上に、新しい細い二本の平行線が、真っ直ぐに東の空に伸びていった。やはり飛行機雲はこうでなくては・・・龍ヶ崎の街並みが迫る間に、どちらの雲も、青とも白ともつかない空に、溶けるように消えていた。

最後の坂の小道を、少し加速を付けて下っていく。田植えも終わった田んぼの向こうに、見慣れた薄い土色のコーナーがうねっている。EXC-Rのメータを見ると、午後1時をちょうど回ったところ。すでにコース上に、マシンが散らばっている。砂利道を加速してMX408に到着。受付の近くに届く“音”からすると、午後はフルサイズクラスからのようだ。とすれば・・・ミニモトのお仲間たちはパドックにいるはず。不用意に開いたスロットルが、砂の上のリヤタイヤをズズッと滑らせる。

先週は土曜日、日曜日ともに雨。そこに、この天気だ。MC連中が集まらないわけがない。トランポがひしめき合うパドックで、ryoの軽トラックを一目で見つけ出すのは無理だった。パドックの真ん中を抜けてコースと反対側へ・・・EXC-Rのハンドルを引くようにして車体を左に傾けると、マウンテンバイクに乗ったむさ苦しい男が一人。ニセmanabuだ。相変わらず無駄な元気をパドックにまき散らしている。どうやらこちら側には停めていないらしい。

パドックの入口まで戻って、今度はコース側の列へとスロットルをひと吹かし。リヤタイヤが小さく滑るのが面白い。列に入る前、手前のトランポ越しにryoのKXが見えた。濃い緑色のテントを挟んで、ざりままのキャラバン、その隣はokano師匠・・・いつものトラックだ。テントの下、椅子に腰を降ろしてくつろぐ人影にフロントタイヤを向けて、空吹かしを数回繰り返す・・・EXC-Rにスモークシールドの出で立ちを、複数の瞳がいぶかしげに見つめている。

数秒の間をおいて、ざりままがようやく“納得”したように頬をゆるめる・・・そうだよ「貴女の“新車”を見に来たんだよ!」。okano師匠は暑さのせいか、上半身裸のまま、奥の方でへばっているようだ。ryoと言えば、一番手前の椅子に掛けたまま、すっかり寝入っている。肝心のCRF150RⅡは、Nスタイルのデカールで脚先までしっかり“化粧”されていて、新車の感じがしない。昔から、そこにあったような不思議な感覚だった。

<さらに話は・・・次回に続く>