季節外れの“おぼろ月夜”

古巣で二日目を過ごす。ただそれは、同じ工場というだけ。階も違えば場所も違う。大型のサーバーが1mを優に越えるラックに整然と収納され、等間隔にいくつもの列が並んでいる。パソコンよりも発熱が多いせいか、空冷式のファンが回る音で、話す声も聞き取りにくいほど。ずっとこのままで居ると・・・耳が遠くなってしまいそうだ。それでも、一階のグラウンドに面した一角は、窓の外の植え込みに太陽の光が跳ねていて、明るく開放された気分になる。時折パソコンの画面から目を離して、外をのぞき見れば・・・透き通った葉の緑が、枝ごと風に揺れていた。

どう頑張っても今日中には終わらない・・・少しだけ残業して、明日に作業を引き継いでから、工場の外に出た。一年でも、昼が長い時分。7時を過ぎているのに、西の空はほのかに明るいままだ。見上げる空には薄く広がった雲の中に、半分だけの月が浮かんでいた。月の光は白く淡く、雲ににじんで溶け出してしまいそうだ。光の当たっていない東側の半分も、その丸みがわかるぐらいに・・・月は“ぼわっと”膨らんでいた。沖縄は梅雨明けしたようだけど・・・関東の空は、このまま月明かりも隠してしまうのだろうか?せっかく高まってきたココロに水を差されるのは・・・勘弁してもらいたい。