意外と楽しく切れるもの・・・仕上がりは別として

軒下から落ちる雨音が消えても、雲が晴れることはなく、行き場のない湿り気がよどみまどろむ。太陽は雲の上、陽射しは遮られたままなのに、まったく梅雨らしい蒸し暑さだ。立ったり座ったりを繰り返すだけで、うっすらと汗ばんでくる。汗が引く時の爽快さも無いまま、時間とともに気温だけが上がっていく。寝過ぎたせいで、昼も間近。「ひさしぶりに走っていたはずなのに」・・・恨んで見上げてみても、梅雨真っただ中の空模様は仕方がない。庭先の緑だけが生き生きと光って見えた。

さらに蒸し暑くなって、不快な土曜の午後。ふと、「コレ、自分で切ったんですよ」と、会社で見たはにかんだ笑いにつられて・・・自分でもやってみたくなった。ちょっとした遊び心だ。それでも、鏡に向かって最初のハサミを入れるまでは、さすがに時間がかかってしまった。そう、ちょうど斜面に怯んで、跳び出し口を何遍もなめてしまうように・・・。そして、これもジャンプと同じように、少しばかりの“勇気”を出して、左手ですくい上げた髪にハサミを入れる。生まれて初めての体験に・・・なぜか鼻唄雑じりの上機嫌になっていく。

失敗しても「明日、プロに任せればいいや」とばかりに、ザクザクと髪を切り落としていく。少しばかり勢いが出てきた。右と左で切り難さが違っていたり、後ろは手の感覚だけが頼りだったりと、30分ほど風呂場で楽しく遊んでから、おもむろに2階のryoに声をかける。感性の“量り”があれば、間違い無くワタシに劣るryoだけど・・・ここは、その感性にすがるしかない。襟足を揃えながら、恐る恐る毛足のばらつきを整えていくryo。まあ、なんとか「遠目には大丈夫な」程度にしてくれたみたいだ・・・。

夕方の予報では「明日はまずますの天気」らしい。ryoの言葉を信じるなら、ちょっぴりさっぱりした髪で、どこか走れそうなところを探すのも悪くないかな?一応用意だけはしておくか。走るとすれば・・・黄色じゃなくて赤になりそうだけど。