人生初“つけ麺”~前編

2PM。空の青が雲の白さを引き立てている。マンションの2階をはるかに越えて、ケヤキ並木が歩道に続いている。その背のてっぺんに、まっすぐ太陽が落ちてきて・・・背の高い、黒々とした並木が、道路に映っている。照らされたアスファルトには、橙色の塗料で「50」と縦長に描かれている。塗料にガラスの粉でも混ざっているのか、陽射しの中、いつまでも光を湛えてきらめいていた。

国道6号線を北に向かっていると、JR北小金駅の入口を過ぎた右手に、“つけ麺”店の大きな看板が見えてくる。今まで気にとめなかったけど、その名前は、誰もが知っている有名なお店だ。首にタオルを巻き付けた姿で看板に収まるのは、テレビでもおなじみの本店の主人。人の良さそうな、職人っぽさがにじむ親父さんの顔は、つい最近テレビが特番を組んで、引退から復活してきた道程を紹介していたから・・・よく覚えている。うつむき加減のその顔を見ていたら、 “つけ麺”を舌の根っこの方が思い出して・・・無性に「三田製麺所」の“つけ麺”が食べたくなった。

つけ麺も初めてなら、行列ができる店を選ぶのも初めてのこと。もちろん昼時で混雑しているのはざらだけど、ここは、どうやら人気の店らしい。今の仕事の“クライアント”に誘われて、金杉橋の近くから、JR田町駅方面へと二人並んで歩いていく。国道1号線、通称“桜田通”に面した慶應大学から田町駅に抜ける「芝五丁目」界隈は、狭い路地の両側にめし屋がびっしりと詰まった、一大“呑み喰い処”だ。「三田製麺所」は、そんな芝五丁目でも駅に近い、一番にぎわう路地に面していた。“チェーン店”と聞くだけで、舌が素直じゃ無くなるけど・・・ここは“ひと味”違ってた♪

<続きは次回、後編に>