雨ニモマケズ~2

工業団地の入口を左折、しばらく走った先にある畑と駐車場の間を入って、半谷モトクロスパークのゲートを過ぎていく。すでに“やる気”は失せたまま、変更されたコースを見るだけになってしまいそうだ。竹林に囲まれた小道は湿っているけど、ぬかるんでいるところもなくて、素直にアクセルを踏んでいける。どうやら雨上がりの“始末に負えない”半谷ではなさそうだ。

竹の葉が頭の上を覆い、薄暗い小道。そこから見るパドックは、まるでトンネルの出口が覗いているようだ。視界の開けたパドックへ出ると、Bongoが激しく揺さぶられる。自慢の赤土はトランポがつけたタイヤの跡を残したままで固まっていた。昨日まで乾ききっていた土に雨が落ちては染み込んでいく。先客は・・・所沢ナンバーのハイエースが一台、奥の木陰に停まっているだけだった。

事務所と言っても、コンテナを改造したような簡素な造り。その周りに広がる木立の外れに、Bongoを着けて、エンジンを止める。フロントガラスにはあっという間に水の膜が垂れて、鉄製の屋根の上で、雨粒が音を立てている。ハンドルに突っ伏したまま、木の葉を揺らす雨を見ていると・・・ハイエースがもう一台、ゆっくりと入ってきた。フルサイズを駆る顔見知りの親子だ。犬好きで元気な高校生と、人当たりのいい親父さん・・・これがめっぽう速い。ガラス越しに挨拶を交わして、Bongoの前を通り過ぎていった。

雨の中、運転席から白髪混じりの親父さんが降りてきて、足早にコースへと歩いて行く。その間も、雨は強くなるでも弱くなるでもなく、当たり前のように雨音を響かせている。時折、大きな音がするのは、木の葉の先から滴る雨粒だろうか。いきなり大きく響くから、ちょっと驚かされてしまう。フロントガラスに流れる水の曲線を見ては、もうほとんど帰ろうとしていたとき・・・コースから、笑いながら親父さんが戻ってきた。

エンジンをかけず、電源だけが入る位置にキーを回して、パワーウインドウを操作する。水滴のせいでもないだろうが、グググッと引っかかるようにして運転席のガラスが下がっていく。「まいったねー。降るとは言ってなかったよね?」と、いい笑顔で悔しそうに話し始める。「コースはいいよ。もう少しで止むんじゃないの」。あくまでも走る気だ。及び腰になっているワタシの心を知ってか知らずか、すでに一緒に走るつもりの話しぶりだ。

<次回に続く・・・>