雨ニモマケズ~3

もうしばらく・・・クラッチを踏みつけた足を戻して、フロントガラスを眺めては耳を澄ます。運転席側のガラスは、半分開いたままだ。「もう大丈夫じゃないの?」、親父さんから声がかかる。「もうおしまい。これ以上は降らないよ」と、明るく笑った声だ。確かに小降りになってきている。気のせいか、空も白く高くなって、雨雲は薄くなったみたいだ。雲が晴れることはないだろうけど、本当にもう降らないのかもしれない。元々降る予定はなかったんだから・・・当たり前か。昨日洗ったばかりのRMを降ろすかどうか、親父さんの言葉を確かめるのと、本来の目的を果たすのと、同じぐらいの重さで、Bongoの運転席から体を這いだしてやる。

コースまでの路面も、ところどころ白く乾いている。思ったよりも、雨はひどくなかったようだ。最終の左コーナーの先、狭い入口からコースを下っていく。低いテーブルトップの手前にあるシングルジャンプは記憶がない。そこから奥に下る途中のリズムジャンプは、二つともそのまま。最初のリズムジャンプの微妙な距離感もそのままだ。下りきった逆バンクは黒く湿っている。左巻きに立ち上がって、シングル、ダブルときて右にターンするはずが・・・コースは真っ直ぐパドックへと突き抜けているように見える。ちょうど右に曲がるバンクが、そのままシングルジャンプになって豪快にストレートにつながっている。スニーカーの底から伝わる感触もしっかりしていて、悪くない。全体的に赤茶けたコースは、親父さんの言うとおり、いい状態。ストレートも長くなって、ちょっと面白そうだ。

ストレートから右に折り返すのだけを確認して、パドックへと引き上げる。コースを歩いている間に、ほとんど雨は気にならなくなっていた。見れば、Bongoの横に、二台のRM-Z250が並んでいる。もはや尻込みしている理由はなくなった。奥から戻ってくる直線に気をよくして、RM85Lを降ろしにかかる。着替えを終えた隣の親父さんが、そんな光景を当たり前のように笑って眺めていた。

<いよいよコースイン・・・半谷の“お味”は次回に>