仕切り直しの日曜日~その2

遠慮もなく瞳に流れようとする額の汗。タオルを押し当てていればいいんだろうけど、肌が空気に触れていないことが耐えられない。太陽に射られるのではなく、蒸されている感じ。幸い、今日はクーラーボックスを持参していて、中には保冷剤がたんまりと入っている。冷えたスポーツドリンクで内側から、首筋と脇の下に保冷剤をあてがい外側から・・・どうにか体を冷まそうとしても、なかなか熱気は逃げない。湿度のせいなのだろう。20分そこそこの走りで、すっかりイスから動けなくなった目の前を、淡いブルーメタリックのハイエースが二台、ゆっくりと通っていった。

5台のうち、ミニモトはワタシのRMだけ。先週と同じような状況だ。二本目を走り出せないでいるのは、暑さだけではないのかもしれない。それなら、ちょうどいい。長めの休憩と決め込んで、RMの機嫌を直すことにした。もたつく中速域の混合比を変えるために、キャブレターから円筒型のスロットルバルブを取り外す。本体にねじ込まれているだけの作り、右手でひねれば、簡単に引き抜くことができる。キャップとバルブの間に入った柔らかいスプリングを縮めて、スロットルワイヤーの先端をバルブの溝からずらせば、スロットルバルブが手のひらに残る。ここまで30秒ほど。この整備性の良さが、2スト85マシンのいいところだ。

ニードルジェットの段数を一番上にして、二本目に向けて走り出す。これで中間の混合気は“最薄”の状態。エンジンを掛けただけでも違いがわかるほど、右手の動きに俊敏に反応するエンジン。空吹かしだけが調子良いと思わせるぐらい軽々と、クランクが回っている。薄すぎてチカラがないと困るけど、コースに向かう間は、そんなこともない。ジャンプを二つ跳び終わって、問題の左コーナーを3速で立ち上がろうとすると・・・チョン!と一瞬だけ半クラッチを当てれば、すぐさま加速していくRM。セッティング変更は、どうやらうまくいったようだ。

調子の上がったRMに気を良くしたのも、ほんの数周・・・反応が良く、動きも鋭くなったマシンに、今度は体が付いていかない。体がおいていかれて、何度か不用意にジャンプを跳び出しては、怖い思いをさせられる。コース上に張り合う相手がいないせいで、気持ちの入り具合も違っている。これも体がタレてくる原因かもしれない。もう少し薄くしても大丈夫かな?と頭で考えながら、シートに座ったまま、第一コーナーの先からコースを出て行く。

年甲斐も無く、昨日、ローラー滑り台で遊んだおかげで、尻の皮膚がただれてしまっていた。そこに、この暑さだ。シートに座って走るのはもちろん、パドックでイスに腰掛けるのも穏やかじゃない。腰を支点にふんぞり返って座るなど・・・できたものではない。背筋を伸ばした“くつろげない”格好で、とにかくウチワを扇ぎ続ける。忙しない腕の動きが止まると・・・途端に汗が噴き出しては顔中を流れ落ちてくる。もうすぐお昼という頃になって、管理人のバンが入ってきた。今日は息子さんではなくて親御さんの方だった。

財布に入れたまま無くしてしまった「走行カード」。それを再発行して、これまでの分のハンコも押してもらって・・・そんな管理人の心遣いが、ちょっとうれしくて・・・あと10分で12時だというのに、コースへ飛び出てしまう。5周して戻ってきた時には、ちょうどお昼になっていた。今日はいつものカップ焼きそばではなくて、冷えた“ねばねば”そば。keiが昨日、間違えて買ってきた“麺1.5倍”のそばは、味よりも何よりも、冷たい喉ごしがたまらない。

<次回、最終話に続く>