仕切り直しの日曜日~最終話

そばを啜っていると、パドックに軽トラが一台やってきた。運転席にいるのは、ryoだ。半谷のコースが気になって、見に来たらしい。残りのそばを一気に流し込んで、ウチワ片手に二人でコースを歩き始める。高低差や距離感など、走っていては気がつかないところを自分の足で踏みしめていく。ジャンプの多くなったコースにあって、隣を歩くryoの関心事は・・・やはり最後の2連ジャンプだった。「ちょっと距離があるかなー」と、さすがに“軽く”いなせる印象ではないらしい。しっかり一周歩いて戻ってくれば、隣は顔中汗だらけになっていた。

陽射しが雲に隠れて、いっそう蒸し暑くなった昼下がり。「みんなの走りを見てから帰る」と、コースに向かうryo。ちょっとつまらなそうな背中が見えなくなってから、身軽になっていた上半身にガードやウェアを被せていく。それだけでも体温が上がってくるから厄介だ。お隣のCRF250Rが一番手で午後のコースへ・・・それから遅れること5分、ヘルメットに無理矢理頭を押し込んで、RMに跨がる。少し息苦しいけど、ryoのおかげで張り合いが出てきた。

ミニモト仲間が恋しくなるほど、“目標物”のないコース上。おまけに心拍を上げる気温・・・傍らで見つめるryoの視線だけが、頼りだ。あちらこちらと移動しながら、コースの要所を見て回るryo。タダの見物じゃない。この日“二番目”の走りで、そんなryoを楽しませてやる。「ヘルメットとブーツ、持ってくれば良かった・・・」と言わせられたのが、ちょっといい気分。ryoを残して、先にパドックへと戻るRMとワタシ。その後から一通り満足したryoが、ゆっくりと引き上げてきた。

ryoが帰ってからは、20分の走行を繰り返すだけ。それ以上走り続ける体力もなく、ryoをして首を傾げる“課題”を跳び出す勇気もなかった。それでも、いつもなら走り終えて片付け始める午後3時30分・・・この日“一番”の走りは、この時間を過ぎてからの10分だった。5周を本気で走りきって、先週よりも少し速く走れた気がするのは、夕風のおかげだろうか。来週からは5時まで走れるようになるというし・・・今度は目標物もいる。だから、もっと速くなれるかな?次を楽しみにしながら、管理人だけが残ったコースに別れを告げて、Bongoをゆっくりとバックさせる。雲の向こう、太陽はまだ高いところに姿を残していた。