寸胴の飯椀、なかなか気に入っている~後編

「土の色」と言うよりは、濃い錆色。焼き物に詳しいわけではないから、よくわからないけど、焼きしめ本来の処理とは別に、焼き上がってから釉薬を吹きつけていると言う。それも金に近い明るい茶色。それが円筒の器に奥行きと表情を演出している。他にもいろんな種類があって、実際に手に取って眺められないのがもどかしい。ページをあちこち飛び回って、ふとトップページに戻ってみると・・・「おためしセット 2000円」のタイトルに気がついた。

18ある中から、気に入った器を2つ選べて2000円・・・しかも消費税込、送料も込み!「まずは手にとって見ていただきたいから」と、初めての方限定らしい。そんな「おためしセット」18種類の中に、目当ての「やきしめ飯器」が入っていた。これは迷うこともない。もうひとつを白い「ろくべ茶碗」に決めて、“買い物かご”に入れる。パソコンの画面で見たのと同じ“もの”が届くことを期待して・・・。

それから三日後。上部と両脇に「こわれ物注意」の貼り紙、神経質な二重梱包の四角い箱が届いた。ひとつ目の箱を開いて、器の入った箱に手をかける。よく見れば、開けた箱の中にはいろんな“おまけ”が入っている。・・・ポケットティッシュに鮮やかな橙色のクリップ、手作りの瓦版・・・和紙でひねられた“五円玉”は、そのまま「“ご縁”がありますように」と願いが込められたものだ。何だかワクワクさせてくれる“玉手箱”のよう、その奥にある器の入った箱を開けると・・・見覚えのある“錆色”をした器が出てきた。

高温で焼き上げた“器”は、土の純度が高くなって丈夫に仕上がるという。確かに持ち上げる手のひらには、“硬い”感触が伝わってくる。縁を人差し指の爪でピンと弾くと、澄んだ音が高く響く。思っていたのより、少し大ぶりだ。蛇腹のような表面が几帳面な印象だけど、左の手にひらに収まった「やきしめ飯器」は期待を裏切らなかった。さすがにこれだけで“飯からお茶まで”は難しかったけど・・・昨日も今日も、そして明日も・・・飯椀として一緒に日々を重ねていくはずだ。