夏らしく、アツく!アツく!~その7

昼をはさんで、午後1時。待ちかねたように着替え始めたのは、一番年若のkyo-hei。いつも「半日しか身が入らない」と言っていたのに、今日はまだ走り足りないようだ。ヘルメットに小型のオンボードカメラを取り付けると、ryoと二人、連れ立ってコースへと出ていった。

今やフルサイズマシンを駆り、NAライダーとなったkyo-hei・・・そして、今でも85マシンのままのryo。そんな“階級違い”の二人は、それでも一緒に走れるのが楽しいようで、何度も絡んで遊んでいる。この二人に割って入るつもりだったのに・・・同じKX250Fでも、色無しゼッケンのマシンが絡んできた。#75を付けるのは・・・とんちんかんのkazuだ。キャブ車のKXは、kyo-heiのインジェクション車より、少し音が小さい。

いよいよギャップも深くなってきて、時折もんどりうって転がる姿が脳裏に浮かぶ。上り勾配・・・ニーグリップをしていても、座ったままでは内蔵が突き上げられて気分が悪い。ただ、午後になって体はしんどいはずなのに、気持ちは昂ぶったまま、右手が緩むことはない。それに“追い風”も吹いている。その風を受けて、下りにも勢いがついてきた。風を前に通すつもりは、無い。

金色の土煙にラインを見失って、何度も後ろに下がるKX250F。それでも、すぐに戻ってくるから、今日は気持ちの入りが違うみたいだ。モトクロスを始めて一年が過ぎ、マシンもカワサキ党らしくKXに乗り換えて・・・おまけに、必要以上に乾いた路面、そして「走りたい」と望んでいたモトパーク森。いろんな思いの詰まった夏空の下、前に踊るRMをどうにかして「刺したかった」らしい。

ちょうどコーナーの入口と出口、お互いがお互いを十分に見て取れる位置で、周回を続ける。そのうち、右手が思いどおりに動かなくなって・・・フロントブレーキで減速するのが、かなり怪しくなってきた。・・・フープスの入口。どうも今日は、ココが鬼門のようだ。だらだらとフロントのブレーキレバーを引いたままでコーナーに入ると、盛り上がった砂にフロントタイヤが埋もれて、RMが右に倒れかかる。とっさに右足で路面を蹴り飛ばして、車体を真っ直ぐに戻す。加速する時間を失くしたRMに“半クラッチ”で喝を入れて、一つ目のコブを跳び出す。こんな好機を、kazuが見逃すはずもない。KX250Fの太い排気音が、ヘルメット越しに少し大きく聞こえていた。

<次回に続く>