8/7のキオク~終

※今日のRIDE DAYも楽しかった。そちらの話は後日改めて!

目の前を走るクルマのブレーキランプも識別できない。平湯温泉がすっぽりと豪雨の中だ。木々に遮られることも無いから、山で出会うよりも性質が悪い。安房峠道路の出口、国道158号線と471号線が交わる交差点で、我慢できずに高い屋根のパーキングに逃げ込む。すでに先客が6台、さっき峠で先行されたビッグスクーターも、その中にあった。いつ止むともわからない灰色の空を、ただただ12の瞳が見つめている。濡れていた手を乾かしてから、タオルに巻き付けて、二重にしたビニール袋にしまい込んでいた携帯を取り出す。ryoからメールが入っていた・・・「白川郷を一望だぞ^ ^」。あいにく圏外で添付された写真は見られなかったけど・・・きっと青空なんだろう・・・ちょっと悔しい。

あと30kmも無いところに居るのに・・・空は黒く、雨は止みそうにもない。時折弱くなることはあっても、すぐに激しく音を立てる。その繰り返しだ。その何度目か、小降りになった一瞬に、EXC-Rのエンジンに火を入れた。ヘルメットを被り、雨水が川のように流れる通りへと走り出す。冷えたエンジンに空吹かしで喝を入れて、長い直線を上っていく。雨は・・・また激しく降り始めた。ループ状の道路が平湯トンネルに飲み込まれて、期待して抜けた出口では・・・さらに雨足が強くなっていた・・・。急勾配で丹生川村を下っていけば、その先が高山市街だ。

勾配がなだらかになる辺りで、いきなり路面が乾く。太陽も姿を見せて、再び夏模様・・・にわか雨と言っても、その境はあまりに唐突、突然過ぎて・・・喜ぶのは、そこからだいぶ下ってからだった。国道158号線が左に折れる交差点、角のコンビニで最後の一休み。水を吸って重たくなったジャケットを、横の金網に引っ掛けて“天日干し”だ。携帯のアンテナが立ったところで、ryoからの写真をダウンロードしてみる。明るい緑の水田の中、合掌造りが点在する、見慣れた白川郷の風景が映っていた。陽射しあふれる夏模様・・・ryoは雨に当たらずか、と再び悔しい思いをしながら、山から流れてきた雨粒にあわてて身支度、国道41号線経由で高山へと向かう。山を背にすれば、もう雨に当たることは無いはずだ。

午後3時ちょうど。期せずして、予定していた時間どおりに、高山駅前のビジネスホテルに到着した。先に着いているとばかり思っていたryoとXR230の姿は、まだ無い。チェックインをすませ、狭いツインの部屋で、カーキ色のカーゴパンツとビニールサンダルに履き替える。解放された体で、もう一度エレベータでフロントへ。そこでカギを預け、駅前通りに用意されたベンチに腰掛けて、遅れているryoのXR230を待つことにした。右、左と確認しては、手元の携帯に視線を落とす・・・そんなことを繰り返していると、ホテルの脇の道に入っていくバイクの姿が・・・排気音があまりに静かで気がつかなかったけど、春日部ナンバーのXR230は・・・ryoだった。無事に合流、うれしいやらホッとするやら・・・気のせいか、その後ろ姿は少し大きく見えた。

<8/8、8/9のキオクへと続く>