8/8のキオク~2

走るにも歩くにも、陽射しが眩しくて敵わない・・・。歩道を十数メートル戻って、遠目に売店を覗き込んでみる。真ん丸としたスイカが台の上にいくつも並べられていて、ちょっと食べさせてくれそうな雰囲気じゃない。その奥で目が合ったのは、短い髪を金色にして耳にはピアスを通した、ここのおかみさん風の女性。大きいけど、きりっとした瞳だ。思い切って「タクシーの運転手に聞いてきました・・・スイカ、食べさせてもらえますか?」と、切り出した。一度瞬きをすると、「あっ、いいよいいよ」と、後ろからスイカを二切れ、急いで持ってきてくれた。「さっ、たべてたべて」の声に、さっそく一口・・・「ん、うまい!」。

水分が多いのに、甘さがしっかりあって、歯ごたえもサクッとしている。あっという間に食べ終わろうとする頃、「さっ、これもこれも」と、もう一切れずつ、差し出してくれた。遠慮がちにいただくと、自然な甘みは喉に絡みつくことも無く、口いっぱいの水分と一緒に胃袋へ落ちていった。「お代は要らない」と言うから、これ以上の所望は失礼だけど・・・お金を払ってでも、あと数切れ食べたかった・・・スイカ好きを自認するワタシには、炎天下に格別のご馳走だった。6月の終わりごろから9月の初めまで、長い期間味わえるという「波田のスイカ」。今度来るときは「是非クルマで」と、強面だけど優しいおかみさん?!に頭を下げて、古畑園を後にする。ヘルメットの中、吐き出す息にスイカの甘い香りが残っていた・・・。

松本から信州中野までは、いくつか行き方がある。ただ「混雑した平地を走りたくない」のは、二人とも同じだ。そして、選んだ経路は・・・国道143号線を伝い、青木峠越えで松本市を抜ける道。遠回りだけど、その分、クルマは少ないはずだ。国道19号線犀川沿いに少し北上して、県道から国道143号線に入る。思ったとおり、行き合うクルマの姿は・・・ほとんど無い。青木村からは、そのまま上田市には下りず、県道で麻績村に抜けて、国道403号線千曲市を経由していくことにした。先の長い菅平高原の涼風よりも、今この時に吹く山風に浸っていたかったからだ・・・。

<次回に続く>