8/8のキオク~3

ツーリングマップルに「旧道に千体の石仏が」と記されていた、その旧道に寄り道したまでは良かったけど・・・曲がったところが良くなかった。クルマが通れる道幅だったのは、最初の百メートルほど・・・道はどんどん細く、草まで生えてくる始末・・・「この先車両進入禁止」の表示板が、行く手を阻むでもなく、道の傍らに避けられていた。「どうするよ?」、後ろのryoに振り向くと・・・「クルマが通ること無いから大丈夫じゃないの」と、お気楽な返事が返ってきた。今居る場所から、道は左手に大きく上っている。Uターンできるのは・・・ここが最後、そんな空気に満ちていた。

ryoのXR230に押し出されるように、EXC-Rが急坂を上り始める。ギヤは一速、ここからはもう下げられない。滑り止めが刻みつけられたコンクリートは、幅が2メートルぐらいだろうか・・・ところどころ途切れて無くなる、左側の落下防止柵・・・落ちると、ただではすまない高さだ。すでに石仏の姿など、どうでもよくなって・・・キャンプツーリングしていた頃、間違って湖畔の遊歩道に入り込んでしまった時のことを思い出していた。あの時は、何とか通り抜けられたから良かったけど・・・今、ここでUターンは、出来ない相談だ。クラッチを切ったり繋いだり、エンジンだけは止めないようにして、きつくなる勾配を不安に思いながらも、上り続けるしかなかった。

しばらく上った先に、“希望”が見えた。石造りの鳥居と、コンクリートブロックで建てられたトイレ・・・あそこまで上れば、平らで広い場所が待っている。右手を煽り、ギヤを二速に上げて、テーブルトップジャンプのテーブルに乗るかのように、EXC-Rが狭いコンクリートから、広々としたアスファルトの道路へと躍り出た。XR230も後に続いている。ryoが普通にしているのは、マシンのせいだろう。低速で隘路となれば、XR230に分があるのは当然だ。「ずっと二速だったよ」・・・ryoの一言が、その性格を語っていた。

社務所とも民家とも言えない中途半端なバラック、その庭の脇を回って、林の奥を覗くと、うっそうと茂る木々の下に、石仏が並ぶ古の参道が続いていた。これで十分だ。来た道を戻ることも無く、クルマがすれ違えるだけの道幅のアスファルトを、悠々と下っていく。道が平坦になって、その先に見えるのは・・・車止めの柵。二つあるうち、ひとつが取り外されている。コの字型の鉄柱をすり抜けると、広い駐車場になっていた。どうやら、また“過ち”を犯したようだ。上ってきた道は、途中からクルマが通る道では無くなっていた・・・。こんな芸当ができるのも、オフロードバイクならではだ。

<次回に続く>