8/8のキオク~5

信号待ちをしていると、ryoが左手を叩き、国道に面した店の“お品書き”を指さす。栗ソフトクリーム・・・260円とある。信号が青に変わってから、ちょっと広めな交差点の角にマシンごと乗り入れる。そのままマシンを置き去りにして、早速店の方へ歩いてみた。店の名は、味麓庵。「福栗焼き」が有名な和菓子屋さんだ。ソフトクリームは、いわば“ついで”みたいなものか・・・大粒の栗を丸ごと、栗あんで包み込んだ「福栗焼き」に惹かれながらも、栗のソフトクリームを二つ注文。冷房の効いた店内に腰を下ろして、いただくことにする。

栗の実のかけらとともに、舌触りのあるざらっとした甘みが口に残る。キンキンに冷えたモンブランケーキのようだ。栗の味がソフトクリームに勝っているだけでも、小布施に寄った甲斐があるというもの。コーンの“しっぽ”を口に放り込んで、丸太風のイスから立ち上がる。小さな店内に、また一人女性の客が入ってきて・・・「福栗焼き」の5個入りを2箱、買い込んでいく。その彼女と入れ替わるように、ソフトクリームに満足して店を出てきた・・・はずなのに、EXC-Rの横に立っても、キーをONにできないでいる・・・。

この炎天下、小一時間さらしていても平気なら・・・と、結果と財布をryoに託して、しばし待つことに。すぐにryoが戻ってきた、手のひらに小さな紙袋を持って。「つぶさなければ」大丈夫らしい。肩からデイバッグを降ろして、その一番上に「福栗焼き」をそっとしまい込む。デイバッグを背負い直して、浮かれ気分でEXC-Rのエンジンを始動する。今日の泊まりは温泉宿・・・宿に着いてから、畳の上でお茶するのが楽しみになった。

街並みを離れて、再び広域農道を左に曲がっていく。“北信濃くだもの街道”と名が付くだけあって、道路の脇にくだもの畑が延々と続いている。中でも多いのは、やっぱり、りんごの木。青々とした枝葉の合間に、りんごとわかる実を付けた木々が一面に広がる光景は、何とも信州らしい。雪国によく見る、白いコンクリートの路面が、やわらかな丘陵地帯を縫って走る。まだ空高くにある太陽から降る陽射しが、コンクリートにぶつかって、さらに白く光る。ふと見上げれば、渋温泉が近いことを、青い案内板が知らせてくれていた。

<次回に続く>