8/9のキオク~2

この通りを流すのは、これで何回目だろう・・・もう数えるのもおっくうなくらい往復している。それでも、特典でもらった“温泉無料引換券”、せっかくだから「入ってこいよ」と、ryoの背中を叩く。どうせなら「“露天”がいいんじゃないか」と付け加えると、“貸切露天の宿 大丸屋”に向かって、通りを下る。途中で「西正」を通り過ぎて・・・EXC-RもXR230も、着替えも荷物も、みんな預けっぱなしだ。「大丸屋」は横湯川のほとりにあった。渋湯橋の上からryoを見送り、長椅子に腰かけて、吹く風に顎を上げてみる。うなじに浮かんでいたら汗が、すーっと乾いていった。ほどなく、上気した顔を手であおいで、ryoが歩いてきた。そろそろいい時間だ。予定の12時は、とっくに過ぎている。

「最後に、もう一度だけ屋台村に・・・」。まあ、後は帰るだけだし、ここで急いでも仕方がないか・・・と、また長椅子に座り直す。赤い「新ユクモパス」がryoの胸元に翻っている。時間は良いけど、空腹には我慢ができなくなってきたところで・・・両手をふさいでryoが戻ってきた。左手にビニールのコップ、右手には“焼きトウモロコシ”(狩人さんたちは“ユクモロコシ”と呼んでいるようだ)・・・ワタシへの“差し入れ”らしい。手渡されたコップには白いジュースが注がれている。最初の一口、冷たさが喉に流れる。ぶっかき氷ごと甘いジュースを口に含んで、ガリガリと砕いては飲み込んでいく。

それほど期待していなかった“ユクモロコシ”だけど・・・これが美味い!粒も揃っていて、皮も厚くもなく薄くもなく、ちょうどいい歯ごたえだ。大口開けてかぶりつき、黄色の粒をまとめて歯でつぶすと・・・甘い汁が口いっぱいに広がる。空きっ腹だからじゃなくて、今が旬のトウモロコシ、一番美味しい頃なんだろう・・・きっと“朝採”だ。思いがけずに味わった地物の“旬”・・・ryoに感謝だ。腹も落ち着き、渇いた喉も潤って、ryoも十分だと言う。そのまま“屋台村”の前を通って、「西正」へと川沿いを歩いていく。日陰は、まだ涼しくて、陽射しに川の流れがキラキラと眩しく輝いている。流れる水の音は、速くて透きとおっていた。

<次回に続く>