夏の終わりのキセキ

「お前の故郷、逆回りになったんだよ・・・」。西の空に陽が落ちて、夜になるまでの淡い光と色の中、ネロを連れてあぜ道を歩いていく。速いか遅いかは別として「ホームコースだ!」と言い張れるMX408は、走り始めた頃の回りに戻って・・・少しだけ悩ましいコースになっていた。それでも、表面の砂を払えば、乾いた固い路面が顔を出し、その上をマシンが走り抜けるたびに、白い砂煙が舞って辺りが見えなくなるのは・・・よく晴れた日のMX408そのもの。119日前と少しも変わっていなかった。

ネロに引かれるだけでも、肩と腰に重たい痛みが伝わって、足の動きもぎこちなくなってくる。ちょっと後ろに体重を預けて、一歩一歩、足の裏を慎重に降ろすようにして歩いていく。そんなこと、お構いなしに突き進むネロ・・・我が家で一番の俊足を誇る彼女、河川敷を全力で走っても尽きることのない、その持久力に今日の不甲斐ない走りが交差して・・・思わず「わけてもらいたいよ、ネロちゃん!」とこぼしてしまう。いよいよ日が暮れて、黒くなりかけた空の片隅、東南の方角に一番星が輝いていた。

<新レイアウトのMX408、その味は・・・次回に続く>