ピンピン!そして、新しき好敵手!?~opening lap

ちょうどタイヤの2/3が隠れるくらい。確か1組目でトニーが並んだグリッド、YZ450Fが削り取った轍は、深さがいい具合だ。下に降ろした両足、ブーツの底から大地の感触がしっかりと伝わってくる。“15秒前”のボードが“5秒前”にひっくり返って、スターターのiguchi師匠がコースサイドに駆けていく。伸ばした背中を腰から折り曲げて、バーをじっとにらむ。集中力が途切れそうになる手前、ギリギリの時間で、ゆっくりとバーが下がった。そして、そのバーは・・・クラッチレバーを離すよりも早く、RMのフロントタイヤの上に・・・「やっちまった!」。引っかかったんじゃない、停まった位置が前過ぎて、バーが地面まで落ちなかっただけだ。フロントタイヤの上に止まったスターティングバー。この瞬間、すべての“思い”が真っ白になった・・・。

慌てて後ずさりをして、“コの字”型のバーからフロントタイヤを引き出す。足に力の入るグリッドは、やはり正解だったのかもしれない。地面に落ちたバーを踏みつけて、文字どおりの“再”スタート。第一、第二コーナーを、混沌としたまま、集団が過ぎていく。どこに誰が居るのかもわからない・・・ryoは?okano師匠は?ざりままは?はっきりしているのは、全員がRMの前を走っていると言うこと。前回と違い、コーナーにして二つ先まで、車影が連なって見える。後悔している暇は・・・ない。

スロットルを開けたくても、インフィールドのコーナーには、散水が残ったまま。半クラッチを当てれば、途端にリヤタイヤが真横に動く。フルサイズオープンの常連、トニーが嘆くのも、よくわかる。とかく無理をしがちな“本番”、しかもこの気温・・・やっぱり少し撒き過ぎだ。フープスの入口にも、フープスにも、小さな水たまりが浮いている。そして、フープスを抜けた左コーナーも・・・水浸し・・・。できることなら、ここには撒いてほしくなかった。出遅れた分を取り返すのに、これ以上の勝負どころは無いのに・・・得意のインにラインを取ることは・・・最後まで出来なかった。

それでも何台かを抜いてきて、一周目のフィニッシュラインを越える。10分は始まったばかり。まだまだ、これからだ。

<どこまで追い上げられるのか・・・次回に続く>