誰もいないのが・・・それっぽい! その2

<10/9の続き>

鮫川村の中心街からコースへと続く県道。街並みから離れるようにしばらく走ると、少し開けた場所に出る。なだらかに丘を越えていくアスファルト。雲の取れた空からは、陽射しが斜めに注がれて、道の真ん中に刻まれた破線を、白く光らせている。ちょうどアスファルトが上りから下りに替わろうとする辺り、道路の脇に電光掲示板を支える柱が立っている。その掲示板にデジタル表示された文字は“12℃”・・・この前に見た時の半分以下。夏の盛りだった山間の村は、一足早く新しい季節に入っていた。

コースの入口が見えてくる。約束の9時にあと少し。森の中に延びる褐色の坂、ペンキで「motopark mori」と派手に描かれたコンテナと、その上に設えられた木製の観覧デッキ・・・県道からの眺めは、夏の日と少しも変わらない。ただ、受付の前に広がるコンクリートの上にも、一段下がったところにある砂利のパドックにも、トランポは停まっていなかった。道路に頭を向けている2台、ピックアップバンと灰色のワンボックスは、ここの所有車らしい。今日のお供、tasaki家のハイエースも・・・まだ来ていなかった。

コンテナの前に停めたBongoから降りて、運転席のドアを閉める。音が無くなったモトパーク森のパドック。地を這う空気が、水気をまとい、カーゴパンツの裾を冷たくする。露に濡れた秋口の朝らしい・・・ただ、それにしては、気になる湿気だ。森全体がしっとりとしている感じを確かめに、コースへと歩き始める。角張った小石が、スニーカーの底で、小さく転がった・・・。

はたして、金色の輝きを失った山砂は、たっぷりと水を含んでいた。踏み入れた右足のスニーカーが、ほとんど抵抗もなく、呑み込まれていく。少し固くなったところで止まった右足・・・それを支えにして、今度は左足を前に落とすと、同じように靴の底が沈む。後ろから、粘る山砂に絡まれた右足を引っ張りあげてくる・・・。こんなにネチャネチャっと緩んだ路面は、いつなのかさえ忘れてしまうほど、ずいぶん走っていない。

丁寧に5、6歩でコースを横切って反対側、FMXのランプの下まで行ってコースを見渡していると・・・荷台を改造した軽トラックが、県道から曲がってくるのが見えた。それから5分もしないうちに、tasaki家のハイエースパドックに入ってきた。

<次回に続く>