誰もいないのが・・・それっぽい! その3

連休の中日、“森の住人達”は、どこかのイベント会場へと出張っているらしい。閉ざされた無人の受付小屋と、ブルドーザーが撫でつけたコース。誰もいないのが・・・それっぽい。ただ、どこかに携帯の電波塔でも建ってしまったのか・・・IS03の画面にアンテナが白く三本立っているのが、何だか気に入らなかった。9時を過ぎて、集まったトランポの数は全部で6台・・・まあ納得できる“森”のにぎわいだ。

砂の被ったコンクリートの上、スロットルを開けては閉じて、RM85Lの機嫌を整える。のっけから全開が待っている・・・エンジンは、できれば最初から素直に言うことを聞いてくれた方がいい。一番に出ていったkyoheiのKX250Fが、二周を回って目の前を加速、スタートラインに立つワタシを見るでもなく、斜面に両輪を押し当てて駆け上がっていく。水たまりも無いみたいだし・・・それほど苦労するところはないのかもしれない。クラッチレバーを握り、左足のつま先でシフトペダルを踏み込んで、右手でスロットルを捻る・・・そして、上がり続けるエンジン回転の途中でクラッチレバーを離す。弾かれるようにコースに入った瞬間、フロントタイヤが重い山砂に引っかかり、リヤタイヤが緩んだ路面をつかみきれずに空転・・・エンジンは、一気に吹けきって、軽いはずの車体が、うめくようにして坂を上り始めた。

ふんわりとコースを覆う山砂相手に、ブレーキターンの練習と思っていたけど・・・とんでも無い話だ。パドックに向かって跳び上がるテーブルトップの先、思いっきり砂を巻き上げて回るはずの右バンクだったのに・・・ブレーキをちょっと掛けたばかりに、水を吸った路面につんのめるようにして、RMが急減速。MX408の固く乾いた路面に馴染んだ体は、一気にすべり出すことに用心ばかりして・・・マシンを右側に倒す思いきりも、失われつつある均整を立て直す反応も、すこぶる悪い。そこからフープスを過ぎて、奥の森にステップアップして上る坂でも、重く締まった山砂がタイヤに絡みついて、2スト85マシンの限られた馬力を奪っていく。三周だけ回って、一度パドックへと帰っていった。

<次回に続く>