誰もいないのが・・・それっぽい! その4

RMに三角スタンドを掛けてから、アゴ紐を左右に引っ張るようにして、ヘルメットを脱ぐ。汗に濡れたうなじを山の風が触って、火照った体を冷ましていく。kyoheiのKX250Fは、まだコースの上・・・目の前に、#199を着けたtasaki家のKX85Ⅱが、センタースタンドに載せられている。今日はコイツも走る予定だ。少し年式の古いKXは、それでもほとんど乗っていないから、2011年式のryoのKXよりもずっと新しく見える。Bongoの隣、ハイエースの裏側でネックブレースを着け始めるtasakiパパ、準備はいいようだ。ペットボトルの水を一口、二口と吸い出しては、喉に流す。真夏と違って、そんな量で十分に満足、こちらも再発進の準備は万端だ。

#199のKXには「夏以来・・・乗っていない」という。軽いキックペダルを何遍も踏み降ろしては、エンジンに“喝”を入れるtasakiパパ。でも、KXは一向に目を覚まさない・・・始動にかなり手こずらされている。おまけにKXは、エンジンが暖まるまでに結構時間がかかる。一度手にしたVFX-DTを、再びBongoの荷室に戻して・・・tasakiパパが格闘している間、「もう少し風に当たろう」とイスに腰を下ろす。汗はすっかり消えて、乾いた肌の上で、太陽と風が仲良くしていた。

何か詰まったような、くぐもった排気音を吐いて、ようやくエンジンに火が入った。スロットルの動きから少し遅れて、マシンの後方が一気に白く煙る。引っかかるような、途切れ途切れの排気音が、連続した高い音になるまで、ずっと右手を動かし続けるtasakiパパ。いくらか薄くなった白煙と右手の動きに合ってきた排気音に頷いて、oneのヘルメットを被る。センタースタンドを外すと、シートに跨がり・・・コースの入口へと走り出していた。あわててRMのエンジンを掛けて、すぐにその後を追いかけていく。

バラついた排気音と、白い煙をたなびかせて・・・最初の坂を上りきったKX85Ⅱ。下った先、路面を確かめるようにコーナーを手繰っていく。その後ろに付いて、同じラインでコーナーを回るRM85L。そして、フープスの手前の右コーナー。その立ち上がりで左側に並ぶと、そのままフープスに向かってスロットルを全開・・・別に抜きたかった訳じゃない。ただ、「このぐらいの勢いをつけていかないと」を伝えたかっただけだ。

<次回に続く>