誰もいないのが・・・それっぽい その6

そのままコースを外れて、少し広くなったコースの入口にRMを止める。左手でキルスイッチの赤いボタンを押して、エンジンも止めて・・・後ろから来るはずの黒地に緑の模様を配した車体を、下りきった左コーナーに探してみる。しばらくして立ち上がってきたのは、YZ250F。意味深な視線をこちらに送ってから、重たい排気音を残して、大坂を加速していく。「やっちまったかな?」・・・YZ250Fがもう一周して戻ってくるのを確認して、RM85Lのキックペダルを右手で引っ張り出す。右足を踏み下ろすと、乾いた高音が受付小屋の窓ガラスに跳ね返った。下り坂の“底”ばかり気にしているkyoheiを背に、全開のRMが大坂を上り始めた。

フープスを抜けて、左に傾けたRMを引き起こしながら、跳び上がる斜面の上に目をやると・・・KX85Ⅱを支える白い影・・・tasakiパパがくたびれた背中を見せていた。このやわらかさだ、一度マシンを停めてしまうと、脱出するのは難しい。非力でわがままな2スト85では、なおさら手に負えなくなる。おまけに押して歩くにも、勾配がモトクロスブーツの踏ん張りを邪魔してくれるから、厄介だ。嫌になるのもよくわかる・・・脇を通り抜けるわずかな時間で、そんなことを考えながら・・・“ミイラ取りがミイラ”にならないように、RMを森の上まで運んでいく。

<次回に続く>